AKAMINE BLOG

メンズファッションディレクター 赤峰 幸生のBLOGです。

2009年05月24日(日)

OCEANS 7月号連載 AKAMINE STYLE 目覚めよ、日本の男たち! [OCEANS掲載記事]

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マエストロ赤峰の「オトナ相談室」
仕事、家庭、子育て、そして愛・・・・・・などなど。30〜40代のオーシャンズ世代にもなれば、少なからず何かしら悩みのタネは持っているもの。そんな皆さまの“駆け込み寺”として開設されたのが、このオトナ相談室。
皆さんの質問にお答えするのは、“人生のマエストロ”こと赤峰幸生氏。
今月も痛快なご意見で迷えるオーシャンズ読者に救いの手を差し伸べてくれるハズ!では皆さん、ご一緒に! 教えてっ、マエストロ!


今月のテーマ
“先人の言葉”

[今月の質問]
赤峰さん、初めまして。毎月、心に染み入る言葉をありがとうございます。今回、私が伺いたいのは、具体的な悩みの解決方法というわけではなく、赤峰さん自身の「好きな言葉」です。以前、赤峰さんは、「人生に迷ったとき、苦難と向き合ったとき、幾度となく先人が残した言葉に助けられた」ということをおっしゃっていました。そんな強い言葉を詳しく伺えたら、私自身も自分の人生に対して勇気が湧いてくる気がします。あつかましいお願いですが、是非よろしくお願いいたします。(34歳・東京都在住・メーカー勤務・T.A.さん)

Q.なるほど。たしかにマエストロは言葉の巨匠でもありますからねっ!そいじゃあ、早速、勇気が凛々と湧いてくる“言葉”をぶちかましてください!!
 このスットコドッコイの大ばか野郎がっ!てめえは先人の言葉を何だと思ってやがる。そのへんの応援ソングじゃねえんだ!!先人の遺した言葉は、彼らが苦労を経験して初めて得ることができた、奇跡ともいうべき遺産である。ちょっとくらい思い悩んだからといって、ハンバーガーを頼むように、簡単には出てこねえんだっ!!しかし、まあ、お前は置いといて、この読者は言葉の大切さに気付いているだけ素晴らしい。では、私の経験をお話しよう。
 私の人生に最も影響を与えた言葉はふたつある。 いずれもアパレル会社で働いていた20代半ばに、大川さんという恩師にいただいたものだ。彼は当時の私の上司で、穏やかな人柄の四十代半ばの紳士だ。当時の私は、働き始めて数年経っていたということもあり、ようやく仕事を覚えはじめ、ソツなく仕事をこなしているつもりでいた。しかし、一方でパターン化された仕事に単調さも感じていた。そんなある土曜日の夜、大川さんに飲みに誘われ、こんなことを言われた。「赤峰君よ、どんな小さな仕事をするときにでもね、初めに井戸を掘った人間のことを忘れずに水を飲まなくてはいけないよ」。そのときはピンと来なかったが、帰り道、「ああ」と思ったものだ。ひととおりの仕事を覚えた気になっていた私は、確かに当初持っていた、仕事に対する熱意を失っていたかもしれない。そしておそらくは、知らず知らずに仕事が雑になっていたのだろう。そんな私を見た大川さんは、私のことを思って「論語」にあるそのひとつ目の言葉を贈ってくれたのだ。私は翌週からすべての仕事を見直した。そしてひとつひとつの作業に関する、目的を考えるようになった。するとどんなルーティンな仕事にも、そのシステムを発案し、構築した人間がいて、次に仕事をする人が失敗したり、ミスが起ったりしないような工夫がなされていることに気付いたのだ。私はそんな“井戸を掘った人間”の存在も知らずに、何の考えもなく、ただ先人が組み立てたシステムを動かしているだけだったのだ。にもかかわらず、仕事ができている、という顔をしていた私は傲慢以外の何物でもなかったよ。
 そして二十代最後の年を迎えるころ、この言葉はまた別の響きを持つようになった。“井戸を掘った人間のことを考えているうちに、今度は私が井戸を掘ってみようという気になったのだ。大川さんに話すと、とても喜んでくれた。「『論語』にもあるように、私が話した一から、赤峰君は十を知ってくれたわけだね。赤峰君、まだ誰も掘っていない井戸を掘りたまえ。その水は多くの人に、そして後世の人に必ず何かしらの恩義をもたらすはずだ
」。私が当時、誰も注目していなかったイタリアの服に目を付けたのは、この言葉の影響によるところも大きい。そんなフロンティア意識を持つことができたからこそ、今の私があるといってもいい。
 

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(→)真剣を振るった先月に続き、今回マエストロが往くのは腕に覚えのある書の道。しかし、手にしたのは普通の筆にあらず。なんと、身の丈を超えんばかりの超特大の筆なのでした。マエストエロには書美院の院長、内野七色さんのご指導のもと、「心」という字を書いていただきました。その力強く真っすぐな字面は、マエストロの生きざまを物語るようでした。「背筋が伸びるようなこの緊張感は、心が洗われるようだ。東洋文化の真髄といわれる書道。その奥深さは、服づくりの道にも通ずるものがある」と語るマエストロ。白×黒の千鳥格子のスーツを纏い、袴にも通ずる格式を意識して装うあたりは、やはりただ者ではありません。
 

Q.深〜い、深すぎますっ!マエストロの掘った井戸・・・・・、じゃなくて、お話がっ!!では、仕事で簡単に成功できる秘訣を教えてくれるような、便利な言葉はありませんか!?
 この大ばか野郎がっ!なんとまあ、安直かつセコイことを言う奴だ簡単に仕事で成功する秘訣だと?開いた口が塞がらねぇとはこのことだ!そんな言葉などない!ただ、進むべき方向を指南してくれる言葉があるだけだと心得よ。
 話は戻るが、私が会社を起こすと言ったとき、大川さんは、内心不安でいっぱいだった私の心を察したのであろうか、こんなメッセージをくれた。「中国にはこんな言葉がある。“往くは小道に寄らず”だよ」と。生きるということは、王道とは何かを常に探し、考え、その道をただまっすぐに突き進むこと−私は大川さんからいただいたこのふたつ目の言葉によって、それまで熱意こそあれ、目先のことしか考えていなかった自分に気付いた。頭の中は明日の予定や来月のお金のことだらけ。しかし、この言葉を知ってから、私は常に10年先のことを考えるようになった。すると日々の些細なことでくよくよ悩まなくなった。そしてバブル期にはびこった投機話の類にも、私はこの言葉を反芻し、一切手を出さなかった。ただ王道を突き進み、小道に寄ることなど、よしとしなかった
 洋服の企画に関しても同じ考え方をした。周囲を見渡すと、やれトレンドだの、次は何色が来る、など目先の予想に振り回される輩ばかりであった。私は数ヵ月後の流行など完全に無視し、10年後、いや50年経っても着られる服づくりを目指した。肌触りがよく、丈夫な生地を用い、トレンドに左右されない本物のクラシックデザイン。採算を度外視して上等な生地を用い、手作業をふんだんに取り入れた。おかげで儲けこそ少なかったが、幸いにしてファンは着実に増えていったものだ。
 そしてつい先日、大川さんの言葉に改めて感謝したことがあった。そのきっかけは、私の洋服を購入してくださっているファンの方からいただいたある手紙だった。手紙の送り主は55歳の男性で、1986年に私の作ったコーデュロイパンツを買ってくれたという。しかし、なんと彼は22年を経た今でもなお、そのパンツをはき続けてくれているというのだ。手紙の最後は、「これほど長く着られるものを手に入れられて、私は幸運です」と結ばれていた
 思わず目頭が熱くなり、私は天を仰いだ。そして心の中で、今は亡き人生の父に、感謝の言葉を述べた。「この仕事をしてきてよかった、自分は間違っていなかった」そんなふうに思える、ひとりの男として最も幸福な瞬間だった。こんな素晴らしい体験をできたのは、ただひとえに大川さんのおかげである。

Q.う〜ん、いいですねっ!!これぞ、まさに先人の言葉!でも、どうすればそんなラッキーな言葉に出会えるのですかっ?
 てめぇ、しまいにゃぶっ飛ばすぞ!!ラッキーなどと浅薄な表現を・・・・・これじゃ、余韻も何もないな。いいか、先人の言葉とは「処方箋」のようなものだ。言葉が良薬となり得るかは、その言葉を信じようとする自分の心の持ち方次第なのだ。また、その言葉を与えてくれる「医師」にあたる人物に敬意を払っているかどうか。そして「薬」そのものの力。それらが渾然一体となったとき、初めて言葉は“力”を持ち得るのだ。
 先人の言葉との出会い方は、たくさんある。私は人や本から出会うことが多い。我が国の文豪、夏目漱石の「こゝろ」やフランス作家アルベール・カミュの「太陽の讃歌」は、私の人生のバイブルともいえるものだ。自分の好きなことわざや故事成語などを書き出して、常に目に見える所に貼っておくのもいいだろう。単なる昔の言葉だと思うなかれ。これらもほかならぬ、先人の言葉なのだ。どうか耳を傾けてほしい。先人の言葉は、あなたのすぐそばにもある。あとは、あなたがそれに気付けるかどうかなのである。
 「言葉は心根につながっている」というのが私の信条だ
。無論、先人の言葉は彼らの心にもつながっている。だからこそ己と共鳴する言葉と出会えたとき、まるで先人に導かれるかのように、それが自分の進むべき道の指針になったり、傷を癒してくれる薬になったりするのだ。
 青臭くたっていい、五感を研ぎ澄まし真剣に生きてみることだ。そうすれば、血となり肉となる素晴らしい言の葉に出会えるはずだ。
 

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−近ごろのマエストロ−
講演をすることが多い私は、いつも“人に届く言葉とは何か”を考える。最近、改めて気になるのが、2001年に他界した稀代のシンガーソングライター・河島英五氏の歌詞だ。「酒と泪と男と女」や「時代遅れ」など名曲が数あるが、その中でも私が愛しているのが「旅的途上」である。





春はあざやか 菜の花畑で
雲などながめコップ酒
夏は星降る 浜辺に手まくら
波を相手に 旅の酒

人恋しさに飲んだ酒が
なお人恋しくさせる
年がら年中 恋焦がれ
人生 旅的途上

作詞・作曲/河島英五


河島氏の歌の魅力をひと言でいうならば、「整った自分を見せようとしていない」ところに尽きる。彼の郷里、大阪の言葉で言うなら「エエカッコしない」というところか。一切のてらいがなく、シンプルで温かい。私は車の中でよく「旅的途上」を聴く。口ずさみながら、このように潤いがあって、真っすぐな言葉を紡ぎ出せれば最高だ、といつも思う。
 

■皆さんからの質問待ってます!
仕事から家庭、恋愛、そしてファッションetc.・・・・・・、日ごろ読者の皆さんが抱える悩み、疑問など、相談したいことを何でも教えてください。マエストロ赤峰がズバッと解決いたします!少誌ホームページ[ www.oceans-ilm.com ]へアクセスのうえ、トップページ投稿してください。

Posted by インコントロ STAFF at 00時00分   コメント ( 0 )

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