AKAMINE BLOG

メンズファッションディレクター 赤峰 幸生のBLOGです。

2009年09月24日(木)

OCEANS 11月号連載 AKAMINE STYLE 目覚めよ、日本の男たち! [OCEANS掲載記事]

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マエストロ赤峰の「オトナ相談室」
仕事、家庭、子育て、そして愛……などなど。
30〜40代のオーシャンズ世代にもなれば、少なからず何かしら悩みのタネは持っているもの。
そんな皆さまの“駆け込み寺”として開設されたのが、このオトナ相談室。
皆さんの質問にお答えするのは、“人生のマエストロ”こと赤峰幸生氏。
今月も痛快なご意見で迷えるオーシャンズ読者に救いの手を差し伸べてくれるハズ!
では皆さん、ご一緒に!教えてっ、マエストロ!


今月のテーマ
“男の落とし前”

[今月の質問]
赤峰さん、こんにちは。私は「いつか赤峰さんみたいな男になりたい」と憧れている33歳の男です。今回はどうか僕の悩みを聞いて下さい。僕は今、百貨店にあるスーツショップで販売をしています。しかし、先日、ケアレスミスを犯してしまい、お得意さまにご迷惑をかけてしまいました。内容は商品の発送ミス。お客様は当初お怒りでしたが、必死で謝罪したところ、なんとか許していただきました。しかし今後、仕事で何か失敗を犯したときのために、謝罪のコツのようなものを教えていただけないでしょうか? 対応のコツ、誠実な気持ちの伝え方など、いわゆる“落とし前のつけ方”をご教授いただけると幸いです。(33歳・百貨店勤務・東京都在住・Y・Iさん)

 
 

Q.マエストロ流の落とし前・・・・。そりゃ、強気一辺倒でしょうがっ!ビジネスは弱肉強食ですもん。こっちが失敗しても、謝ったら負け!そうですよね、マエストロ〜!!
 この大ばか野郎がっっっ!「ビジネスで謝罪したら負け」だと!?どこで知ったか知らんが、貴様、そんな浅薄な理論を信じているのか? もはや怒りを通り越して情けない!
 謝らないなどとんでもない。私に言わせれば、仕事がデキる男ほど落とし前のつけ方が達者な男である。考えても見ろ。どんな優秀な人間であっても、長年仕事を続けていれば、ミスは100%発生する。それに失敗をしないためだけに仕事をしている男に、大きなことができるわけがない。だから、仕事上のミスなど恐れるまでもない。たまに降る雨のようなものだと思えばいい
 ただ、最も重要なのは失敗したときの後始末のつけ方である。特に問題なのが、傷つけた相手や損害を与えた相手がいる場合だ。どうやって彼らに心を静めてもらうか。とはいえ、どんなにこちらが誠意を持っていても、相手に伝わらなければ何の意味もない。落とし前のつけ方には、さまざまな手段が存在するが、今回は赤峰流の落とし前のつけ方を話そう。
 これは10年ほど前のことである。私にはフィレンツェに住むイタリア人の友人がいる。彼はスーツ工場の経営者で、なかなかいいものを作っていた。かねて「日本でもビジネスがしたい」と言っていた彼のために、私は日本にある有名ショップを紹介した。商談はトントン拍子に進み、彼の工場へジャケットの注文が大量にあったという。彼はたいへん喜んでいた。しかし、問題は納入後に起こった。商品に不具合があったのだ。私は「日本からの注文には、とにかく慎重に、徹底的に細かく対応しなくてはならない」と忠告していたのだが、それでも十分ではなかったのだ。
 とにかく相手は怒り心頭であった。もちろん私も他人事ではない。それに彼の念願であった日本でのビジネスの道が閉ざされてしまうことは、なんとしても避けたかった
 イタリアにいる彼と電話で話したが、彼も「ユキオ、オレはどうすればいいだろう」と焦っていた。私は迷うことなく「今すぐ空港に走れ!」と言った。彼はそのまま飛行機に乗り、成田に到着。我々はその足で、すぐさま取引先へと走った。そして担当者に会うなり、私と彼は土下座をし、床に額をこすりつけたのだ
 ・・・・どれくらいの時間が経っただろうか。我々の行動に相手側は唖然としていた。それから初めて、我々は問題が起こった原因と、これからの対処を述べたのだ。すると相手側は「もういいですよ。お互いに力を合わせて、乗り切りましょう」と言ってくれた。このことが信頼関係を築くきっかけとなり、今でも彼とその店の関係は続いている。
 

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(→)ビジネスにおいて、一分のスキも見せないマエストロのスーツスタイルは、英国人の友人をして「英国人よりも英国人」と言わしめるほど。しかし、この日は、ヘインズのトリムTシャツにコーデュロイの5ポケットパンツ、そして足元はオールスター。我々が目を疑うようなカジュアルなお姿で登場したのでした。そして、呼び出されたのは東京は神保町にある老舗のラーメン屋。まだ昼食には早い時分・・・・、そう思ったのも束の間。なんと、マエストロ自ら厨房に立ち、麺を茹で始めるではありませんか! そう、今月のマエストロは中華そば「伊侠」の店主、沢木さんの指導の下、ラーメン作りに挑戦。自宅では自ら台所に立つこともしばしばというだけあって、ネギを刻むその手つきは手慣れたもの。自らが作ったラーメンをわずか5分で平らげ、終始ご満悦の様子でした。 

Q.え〜! マエストロが土下座を!?しかも、友達のためにっ!こ、これは、熱すぎますっ!やっぱり、日本人としては、土下座は最大の武器ですねっ!
  このスカタン野郎っっっ! !お前はこの話の本質を毛の先ほども理解しておらん!黙って聞いておらんか!
 話のポイントは3つある。第1に「スピード」。問題が起こったら、1分1秒でも早く現場へ急行することだ。問題は時間を経るごとに大きくなり、収拾が難しくなる。それに損害を受けると人間は不安に陥る。だから、損害を与えた相手の反応が遅ければ遅いほど、被った相手はどんどん頭に血が上っていくのだ。
 余談だが、昔、港区にある某有名ホテルでパンを買って帰宅したところ、パンの中にビニールの切れ端が混入していたことがあった。ホテルに連絡したところ、10分もしないうちに総支配人が玄関に立っていた。ミス自体はお粗末だが、このあたりはさすがだ、と私は思った。スピードは誠意を表わす有効な手段のひとつなのだ。
 第2に「意外性」。イタリア人が一目散にかけつけ、土下座をする、という意表を突いたケジメのつけ方こそが、相手の心を打ったといえる。強い気持ちを相手に表現するためには、「ここまでやるか!」と思わせる何らかの工夫が不可欠である。それには意外性が重要な要素となるのだ。ただし、これを奇をてらうことと混同しないようにくれぐれも注意はするように。
 これも余談になるが、意外性がいかに凄まじいものかを実感するこんな話を聞いた。仲のいい友人の体験談なのだが、彼が3年前に新宿の、とある飲食店に入った。味噌汁をいっきにたいらげたところ、なんとゴキ○リ(ご想像にお任せする)の死骸が姿を現したという。怒り心頭に発した友人が店主に抗議したところ、なんと、「これはダシですよ」と言い張る。とんでもない言い訳に一瞬ひるんだが、友人はさらにがんばった。「そんなわけねえだろうが! どう見てもゴ○ブリじゃねえか!」「いえ、これはダシです」と、同じやりとりを10分ほどしたそうだ。そして突然、店主は「わかんない人ですね。ほら」と言って、ゴキブ○を取り上げ、むしゃむしゃ食ってしまったという。友人はあまりの顛末に、怒りさえ忘れてしまったという。当然、証拠は消えた。店主はとんでもないヤツである。もしかすると、この店主は、人間同士のやりとりで、いかに意外性が重要かを熟知した、ツワモノであったのかもしれない。
 そして落とし前のつけ方に欠かせない第3の要素が「説明」である。なぜそのトラブルが起こったか、原因を明らかにする。これは頭の中で処理せずに、きちんと紙に書き出すといい。まずは、原因と思われる事柄を箇条書きにする。次にひとつひとつにどう対処すればいいかという、これからの対策を書いていくのだ。そして今回のミスに対する現実的な処理。理想としては、謝罪に向かう際に用意して行きたいが、間に合わないなら、時間をもらって後日でもいい。既に述べたとおり、とにかく現場へすっ飛んでいくことが重要なのである。
 これは私の話だが、数年前、寿司の出前を取ったところ、吸い物に大きな虫が入っていたことがあった。驚いた私はすぐさま店に連絡したが、謝罪に来たのは出前を担当している青年であった。彼が事情を知る由もない。私はただ、何度も出前し、美味い寿司を食わせてくれていた店が、なぜこんな失敗を犯したのかを知りたかっただけだ。何にも知らない若僧に、「すいません」と言われても何の意味もない。その後、もちろんオヤジを呼んで叱責したが、残念ながらこちらの謝り方も形式ばったものであった。この説明なき謝罪こそが、傷つけられた人の心情を逆撫でする“平謝り”というやつなのだ

Q.なるほど。落とし前に必須なのは、「スピード」「意外性」「説明」。でも、犯した失敗が大きいほど冷静になれないもんですよね?
 うむ、それはそれでいい。パニックになるほど感情的になってもいけないが、反対にクール過ぎても相手に誠意が伝わらない。相手の心情を鎮め、なおかつスムーズに問題を解決するには、「七割の熱意と三割の冷静さ」をキープすることが大切だ。
 当然だが、仕事には保険がない。だからといって、失敗を恐れて何もしないのは、それこそ情けないことだ。失敗したら、きっちり落とし前をつけて次へ進むだけのこと。
 そもそも本当の男の仕事には、失敗というものすらないと私は思っている。困難を前にして、挑戦することをやめてしまうこと。それこそが唯一の失敗なのだ
 
 

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−近ごろのマエストロ−
突然だが、私は恋をしている。しかも、会ったこともない女性にだ。彼女の名は黒木メイサ。フジテレビ開局50周年ドラマ『風のガーデン』で初めて知ったのだが、その凛とした眼差しに私の目は釘付けになった。彼女の作品をいろいろ見たが、とにかくすべての表情が素晴らしい。彼女の目の光には、男の心を波立たせる何かがある。機会があれば、気の利いたバーで、マティーニでも一緒に飲みたいものだ。ん?年甲斐もないだと? ふむ、では皆さまにこんな言葉を教えよう。「一人の女しか愛さない男はしばしば最も幸福な生活を送るが、死ぬときは最も孤独な死に方をする」。ヘミングウェイの言葉だ。私は生涯、恋をし続けるつもりだ。
 

昔ながらの中華そばが楽しめるお店!
東京は神保町に店を構える「伊侠」は、創業して40年以上の歴史を持つ老舗ラーメン屋。カウンターだけの店内は、昭和のムードたっぷり。そして、ご主人の沢木さんが作るラーメンは、昔ながらのあっさりとした醤油だしの中華そば。小手先で勝負しない、王道とも呼ぶべきその味は、一度食べたら病みつきになること必至です。皆さまも、ぜひ味わってみてください。

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「中華そば 伊峡」
電話/03-3294-0279
住所/東京都千代田区神田神保町1-4
営業/11:30〜15:00、15:30〜19:30(土曜のみ〜18:30)、日曜・祝日定休

■皆さんからの質問待ってます!
仕事から家庭、恋愛、そしてファッションetc.・・・・・・、日ごろ読者の皆さんが抱える悩み、疑問など、相談したいことを何でも教えてください。マエストロ赤峰がズバッと解決いたします!本誌ホームページ[ www.oceans-ilm.com ]へアクセスのうえ、トップページから投稿してください。

Posted by インコントロ STAFF at 00時00分   コメント ( 0 )

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朝日新聞be on Saturday “赤峰幸生の男の流儀” 『クラシック・ニューを探して』 2013年2月16日(土)掲載

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