AKAMINE BLOG

メンズファッションディレクター 赤峰 幸生のBLOGです。

2008年05月24日(土)

OCEANS 7月号連載 AKAMINE STYLE 目覚めよ、日本の男たち! [OCEANS掲載記事]

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マエストロ赤峰の「オトナ相談室」
仕事、家庭、子育て、そして愛……などなど。
30〜40代のオーシャンズ世代にもなれば、
少なからず何かしら悩みのタネは持っているもの。
そんな皆様の”駆け込み寺”として開設されたのが、このオトナ相談室。
皆さんの質問にお答えするのは、”人生のマエストロ”こと赤峰幸生氏。
今月も痛快なご意見で迷えるオーシャンズ読者に救いの手を差し伸べてくれるハズ!
では皆さん、ご一緒に!教えてっ、マエストロ!

今月のお悩みキーワード
“日本人の品格”

[今月の質問]
毎月「オトナ相談室」の痛快なマエストロ節に、深く感銘を受けています。突然ですが、私はいわゆる帰国子女で、子供のころから海外の文化に深く浸ってきました。現在も日本にある外資系企業で、さまざまな国籍の人々とともに働いています。最近特に「日本人」である自分を強く意識することがよくあります。果たして、日本人としてふさわしい「品格」を身に付けられているのか。30代半ばにしてお恥ずかしいかぎりですが、正直その自身はありません。今からでも間に合うのであれば、マエストロにぜひ「日本人としての品格」を身に付けるためのヒントを教えていただきたいと思っています。(36歳・兵庫県在住・外資系メーカー勤務R・Kさん)


 

Q.うわぁ、この深刻な悩み、どうしましょう?「品格」ブームに完全に乗り遅れちゃっていまさら難しいですよねっ?マエストロッ!
 やかましいわ!ブームだトレンドだ、お前はブンブンとカナブンのようにうるさい男だな!「品格」がブームだと?てめぇ、ふざけるな!まったく、これだから「品格」を失った世の中だと嘆かざるを得ない。だから、「品格」について書かれた本などが売れてしまうのだ。実に嘆かわしい。「品格」、そしてそれが満たされる所作とは本来、誰かから教えてもらうものではない。自然と備わるものである。とはいえ、そういった本が売れるということは、「品格」を持ちたいと思う輩が多いということの裏返し。かすかな望みが見出せそうだ。悩みを寄せてくれた読者の方も、海外経験や職場の環境が、「日本人としての自分」を俯瞰して見ようと思わせるきっかけになったのだろう。
 「品格」とは、毎日の暮らしぶり、そして長きに渡る生きざまに現れる。まず、すべての基本となるのは他者への配慮を念頭に置くという姿勢である。自分がよければそれでいい。そんな輩のなんと多いことか! タバコのポイ捨てなど、愚の骨頂だ。耐震強度偽装問題、賞味期限切れ問題、そのすべてに通じるのは、自分たちさえよければいい、という愚かな考え方だ。「品格」のある人とは、人に生かされていることを知っている。目の前の茶碗のごはんにありがたみを感じることができる。何事にも常に、感謝の気持ちを持ち得る人であってこそ、「品格」が備わり得るのである。「品格」に関する本を読むことは悪くない。問題なのは、読んだだけで「品格」を備えた気になっている輩がとっても多いのではないかということだ。あなたの行動が変わらなければ、習慣は変わらない。習慣を変えなければ、人は変わらないのだ。今回の相談者は、立派な経歴と社会的立場をお持ちのようだが、それは同じだと心得ていただきたい。「品格」のある人になりたいと願うことは素晴らしいことだ。まずは、自分自身の普段の行動を顧みてほしい。そして、感謝の気持ちを抱いて生きているか、いま一度自分に問い正してほしい。

Q.では、日本人らしい「品格」とは具体的にどういうことなんでしょう?マエストロ、簡単に教えてっ!
 てめぇ、このやろう。何にも聞いてやがらねぇのか!とはいうものの、お前に限っては難しく言うわけにはいかないな、まぁ教えてやろう。そもそも「品格」とは何か。確かに、その答えをひと言で提示するのは難しいが、日本人が昔から持ち続けている「謙虚さ」、「礼儀正しさ」、「思いやり」といった道徳観と言い換えることができるだろう。しかしそれらは、今やすっかり薄れてしまった。農耕民族である日本人は、それらの道徳観念を生んだ、よい意味での「集団主義」であった。しかし、今や「個人主義」がまかり通っている。競争社会の弊害として「合理主義」も極端化し、一切の無駄が省かれている。生活における日本古来からの「情緒」も消えかけている。ITの進化により、何よりもスピードが求められ、生活のゆとりがないのだ。住みやすい社会は、日本人が失いかけているよき道徳観なくしては、成り立たない。では、何が必要か。答えは、「日本人が日本人に還る」ことである。

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(→)休日になると、よく画材道具一式を持ってひとりでスケッチに出かけるというマエストロ。この日は、自然の木を被写体としてペンを滑らせるように絵を描かれていらっしゃいました。木の模様の隅々までを捉えようとするその目は、なんとも気迫のあるものでした。こうやって絵を描いていると、声を掛けられることも多いそう。その出会いというのもまた、スケッチをするひとつの醍醐味なのだとか。

Q.え?日本人に還る?必要なのは、昔の日本人を顧みることよりも、このIT社会を生き抜く「進化」では?
 馬鹿やろう!何が進化だ!日本、そして日本人について何も知らねぇで、何を言ってやがる。おととい来やがれっ!
 進化と言えば聞こえがいいが、言葉だけで実態が伴わなくていったい何になる。そして、日本人としての「品格」に必要なのは、日本特有の物事をしっかり知ることから始めるべきだと言いたい。
 まずは日本語だ。パソコンばかりを使う習慣が定着しきって、自分で文字を書かなくなっている。メールに依存してばかりいるから、手紙のよさを知らない。自分で文字を書くことは面倒だと、わざわざ紙とペンを用意することをしない。文字だって十人十色で、形や筆圧に書いた人の心が現れる。それはメールではとうてい伝えきれないものだ。大正、明治の人には皆、自分の字がある。特段にうまく書こうなどと思う必要はなく、自己流で大いに構わないのだ。そういえば、私は父に届いていた年賀状の文字をよく思い出す。それらの字は実に書き手の心が現れていた。書き手の人柄が、手に取るように伝わってくるのだ。自分らしい字を書けるか、またそいう字に「情緒」を見出せるかが大切なのである。私は誰に習ったわけでもないが、うまい文字を見て、それを手本としている。(注1)富岡鉄斎の文字を見てみよ。字が上手だとか下手とか、そういった判断はできないが、実に趣があるではないか。さらに、私は日本人の心を表すために、外国の友人宛には(注2)スマイソンの紙に筆で文字を書くことがある。そこには日本人ならではの、私ならではの心を宿しているつもりだ。文字に限ったことではない。言葉遣いも然りだ。例えば手紙を書く際、あなたはその冒頭に何と書く?ありきたりの季語を引用してはいないか?それが常識だとでも思っているならば、「品格」を身に付けるにはまだまだだと思われたい。日本語にある季語という美しい言葉を、その意味を考えずただ引用する。そこには、「情緒」のかけらもない。そうではなく、あなたが手紙を書くその日、その季節に対して、感じたことを、そのまま言葉にすればよいのだ。そうして初めて、手紙に書き手の心が宿る。「品格」を持ちたいと願うのであれば、手紙を書いてみよ。面倒に思えることが、無駄に思える時間が、心に余裕をもたらし、殺伐とした毎日のよき句読点となるのである。

Q.なるほど、つまり「ゆとり」ですね。それでは具体的に、普段マエストロが実践していることはありますか?
 私は東京生まれの東京育ちだ。そのせいか、ことのほか自然に触れたいと思っている。森に行けば、木に触れる。木に頬擦りをして、匂いをかぐ。子供と一緒に川縁を散歩もする。そして、木の名前、花の名前、鳥の名前、昆虫の名前を教えるのだ。そうやって自然の中で過ごすことにより、日本という国ならではの四季を肌で感じるのだ
 四季は食べ物でも感じる。イタリア料理もフランス料理もいいが、日本料理のよさは四季が色濃く反映されていることだ。食に関する日本人のデリケートさは世界一である。手触り、歯触り、舌触りが鋭い。「品格」を持とうとするならば、食を通じて四季を感じる敏感な感性を養うことだ。そして、それを子供とともに実践してほしい。


Q.はいはい!仕上げは服装ですね?流行りのアメトラでビシッとキメて、おお、これが「品格」ですかぁ!
 このうすらトンカチがっ!いい加減にしやがれ!服装で大切なのは、流行なんかよりも同じ空間にいる人に不快な思いをさせないことだ。T.P.O.の真意は、そのとき、その場に適した服装をすることで他者への配慮が行き届いていることにある。手本とするなら英国紳士だ。イタリア人は素晴らしい服装を評して「ケ モルト イングレーゼ(何と英国的なのだ!)」と言う。それは控えめで、周りにいる人を引き立てる「品格」のある服装だ。そしてそれは、実はデリケートな日本人の美学にとても通じることなのだ。
 また、日本人ならばやはり着物を着ていただきたい。何より着物を着ることで日本人であることを実感できるからだ。袂を気にしたり、あぐらをかいたり、その所作に日本人らしさが現れる。「日本人に還る」。その手段のひとつとして、着物は実に有効だ。
 失われた「品格」。それは、つかの間の快楽に身を委ねているからではないのか。四季の移り変わりを自覚しているか?そこに「情緒」を見出せているか?見落とすどころか、何も感じていないのではないか。生き急いでいるならば、そろそろ立ち止まるべきだ。耳を傾けるべきだ。そうすれば、心は澄んでくる。見えないものが見えてくる。今まで感じなかったことを感じるようになる。本来あるべき日本人に還ることができる。そう、その姿こそが、ほかでもない日本人としての「品格」と言えるのだ。

 
 
(注1) 「富岡鉄斎」
明治、大正期の文人画家、儒学者。日本最後の文人と謳われる。京都生まれ。


(注2) 「スマイソン」
1887年に創業、ロンドンのニューボンドストリートに店舗を構える英国王室御用達の文房具店。特に1892年に開発された薄い青色の「フェザーウェイトペーパー」と呼ばれる紙は、スマイソンの代名詞。


 
 

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−近ごろのマエストロ−
「5月は植木の季節である。私は季節を感じることができる実がなる木を好み、イチジクやグミを植えている。先日、サクランボの木を新たに植えた。生きるものを育て、愛情を注ぐことで人の心は安らぎを得られる。ゴールデンウィーク前には休暇をとり、沖縄で過ごした。感激した訪問地は「ネオパークオキナワ」。熱帯地方の動植物が自然のまま飼育され、子供と一緒に、生き物と垣根なしに触れ合えた。都会で暮らす私にとっては、実に貴重にして、大切な機会であった」

■みなさんからの質問待ってます!
仕事から家庭、恋愛、そしてファッション・・・・・・etc.、日ごろ読者のみなさんが抱える悩み、疑問など、相談したいことを何でも教えてください。マエストロ赤峰がズバッと解決いたします!インターネットの場合は[ www.oceans-ilm.com ]へアクセスのうえ、「NEWS」から投稿してください。郵送の場合はハガキに @相談したいこと A氏名(ふりがな) B住所 C年齢 D職業 E電話番号 Fメールアドレス G「オトナ相談室」への感想 を明記し、〒162-0825東京都新宿区神楽坂6-42 オーシャンズ編集部「オトナ相談室係」まで。

Posted by インコントロ STAFF at 00時00分

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朝日新聞be on Saturday『赤峰幸生の男の流儀‘「男の三原色」について’』2012年5月26日(土)掲載

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OCEANS 5月号 連載#14

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