AKAMINE BLOG

メンズファッションディレクター 赤峰 幸生のBLOGです。

2008年05月13日(火)

Akamine Royal Line 08SS SAMPLE SALE [サンプルセール]

日頃よりアカミネブログをご高覧いただき誠に有難うございます。
来る5月22日(木)、23日(金)、24日(土)の3日間、
白金台のオフィス兼ショールームにて
『08SS Akamine Royal Line SAMPLE SALE』を行います。
詳しくは、下記及び以下DMご案内掲載内容をご確認ください。
皆様のご来場を心よりお待ちしております。

(株)インコントロ スタッフ一同

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■出品アイテム
ジャケット(一部44、46、50サイズ有り)、スーツ、トラウザーズ、
バミューダ、シャツ、ネクタイ(伊企画)

■開催時間  10:00〜19:00
※24日(土)は17:00までとさせていただきます。

■INCONTRO MAP
印刷用地図】  【Yahoo!Maps

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2008年04月24日(木)

OCEANS 6月号連載 AKAMINE STYLE 目覚めよ、日本の男たち! [OCEANS掲載記事]

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マエストロ赤峰の「オトナ相談室」
仕事、家庭、子育て、そして愛……などなど。
30〜40代のオーシャンズ世代にもなれば、
少なからず何かしら悩みのタネは持っているもの。
そんな皆さまの“駆け込み寺”として開設されたのが、このオトナ相談室。
皆さんの質問にお答えするのは、“人生のマエストロ”こと赤峰幸生氏。
今月も痛快なご意見で迷えるオーシャンズ読者に
救いの手を差し伸べてくれるハズ!
では皆さん、ご一緒に!教えてっ、マエストロ!


今月のお悩みキーワード
“父と子”

[今月のお悩み]
毎号「大人相談室」を拝読しております。ところで赤峰氏にお子さんはいらっしゃるのでしょうか?結婚して2年目に授かった我が子は、この春、小学校に入学します。そこで子育てについて、マエストロの意見をお聞きしたいのです。私の父は厳格な人でした。しかし、私は子供を叱ることが上手くできません。甘やかしてばかりです。父と子の理想の関係について教えてください。(36歳・神奈川県在住・医療関係会社勤務T・Sさん)

 

Q.今や父親の、かつての威厳は失われました。時代は男性に、家事のできる心優しい主夫としての素質を求めているのですっ!
 てめぇ、このへっぽこやろう!何でも時代のせいにするな!お前のような輩ばかりだから、日本がどんどんだめになっていくのだ。私が子供だった自分と今では時代背景がずいぶんと変わった。女が家にいて、男は外で働くという形態ではなくなった。女性の社会的地位が向上したという意味では素晴らしいことだが、だからといって男が家庭のことだけを任されていくことはいかがなものか。それは仕事をバリバリやって亭主関白になれ、ということではない。私も子供を持つ父親であり、掃除もするし洗濯もする。しかし、女化しているわけではない。父はあくまでも男であり、昔も今も父と子の関係に違いなどないのである。
 現代の親は子供に過剰にかまいすぎだ。まるで、腫れものにでも触るような扱いだ。子育てにさえも“事なかれ主義”がまかり通っている。子供の機嫌をとることが、いい父親だと勘違いしていないだろうか。子供を叱れない心優しい父親だと?それで子供が立派に育つわけがないだろう。子供をしつけるのは誰の役目だ。彼らのためになることは何なのか。そんなことは改めて言うまでもない。

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(→)とある休日の昼下がり。なんとこの日は、自宅からほど近い多摩川で「ザリガニ獲り」に興じるマエストロを発見!自称ザリガニ獲り名人と語るマエストロは、まるで洋服の生地を見るかのような鋭い眼光でザリガニを探索。その腕前は確かなもので、シーズン前にもかかわらず見事に捕獲に成功!この日出会った、小さな命は「オーシャン君」と名付けられ、今日も元気に編集部で育てられています。

Q.なるほど。おっしゃるとおりですね。では、マエストロが実際にお父さまにどのように育てられたのか教えてください!
 かつて自分の受けたしつけは、その良し悪しは別として、我が子へのしつけのベースになる。私の父は旧農林省に勤務し、地理の研究者だった。酒豪で無口。日曜日になると剣道の稽古で、ずいぶんと鍛えられた。作法にも厳しく、食事中に足を崩したり肘をついたりすると、容赦なく叩かれたものだ。ある日、遊び疲れた私が食事中に居眠りをしてしまった際などは、家から放り出され、泣けどもわめけど許してもらえなかったものだ。その夜、犬小屋で飼い犬を抱いて寝たことを今でも覚えている。正月のおせちは父が箸をつけるまでは誰も食べない、そんなことがごくごく当たり前の時代だった。何しろ、私は父のことを「お父さま」と呼んでいたくらいであるから。ともかく、父にはそれくらい威厳があった。無論、それはそういう時代であったからで、それがそのまま現代に通じるとは毛頭思っていない。しかし、私の今の生活態度はすべて父から学んだ。無口ではあったが、父の背中は実に多くのことを雄弁に語っていた。今思えば、どの家の父親よりも、そうやって無言の会話を交わしていたのだと思う。
 教育方針は子供の得意なことを伸ばすものだった、と思う。私は絵を描くことが好きで、小学校に上がると絵画教室に通わせてもらった。やらされたのではなく、やらせてもらったのだ。今の親が自分たちの都合で、子供と接する時間をできるだけ少なくするための、時間稼ぎ的な習い事とはわけが違う。絵画を幼少の頃に学んだことは、その後の人生に色濃い影響を及ぼした。19歳のときには(注1)ピエール・カルダンにデッサンが認められ、パリのアトリエで修業を積むために渡仏する運びとなった。しかし、その直前に父が他界。経済的な理由もあり、渡仏を断念する運びとなった。それでも服飾の仕事に携わるうえで、どれほど絵を学んだことが役に立っているか。休日に時間さえあれば、今でも絵を描くことがある。海外に行ってもスケッチをする。そのときどきに、私は父から受けた恩恵を改めて思い知らされる
 今はいい学校に親が入れたいために、進学塾に通わせる。子供の教育を他人任せにアウトソーシングしているのだ。とりあえず、有名な大学に行かせたい。だがそれは所詮、まやかしにすぎない。とりあえず大学を出て、それがいったい何になるのだ。それよりも何よりも、我が子が何をやりたいか、どんなことに興味を持っているかを、一番近くにいる親が知らねばならない

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Q.では、マエストロはお子さんにどのような「服育」をされてますか?もちろん“お洒落さん”なんですよね?
 馬鹿やろう!相変わらず、お前の質問はなんて稚拙なのだ。私は子供をお洒落に着飾ろうなどと、微塵にも思わない。最近では子供服の高級化が進んでいるようだ。雑誌でもよく目にするようになった。しかし、チャラチャラと親の身勝手で子供を着飾るのは、まるで子供をペットと勘違いしているかのようだ。子供を見せびらかしのための道具にすることだけは避けたい。私は子供に必要以上の贅沢をさせない。着させる服はなるべくベーシックを心掛ける。普通でちゃんとしている、それが子供らしい服と言えるのだ。高価な服でなくとも、「服育」はできる。どういうことか。平たく言えば、日常のT.P.Oを肌で覚えさせるのだ。どこかに出かけるときには、その場所と時間に合った服装がいかに自分だけでなく周りの人を心地よい気持ちにさせるかを子供のときから肌身で知ってほしいからである。私の幼少時代、正月になるとまっさらな白の下着が用意されていた。新年の始まりを身ぎれいに迎えるためだ。これは、日本らしい風習のひとつであろう。日本には洋服の文化がない。などという私の言葉と矛盾するが、これはT.P.Oに合った装いを考えるうえで、とても重要な意味を持つ。私自身、今でもそのことをきちんと憶えている。そして、私も子供に同じことを実践している。お洒落がどうこうではない。もっと根本的な服のあり方を教え、そこから生活態度のあるべき姿を理解させる。それが、しつけというものであろう。

Q.では、失われた威厳を取り戻すための、マエストロならではのとっておきの「子育てのコツ」を教えてください!
 てめぇ、コツを教えてくれだと?ふざけるのもこれを最後にしやがれ。子育てにコツなどあるものか。それに子育てとは千差万別。親になって初めてわかる、正解はひとつではない。だが、あえて私なりにアドバイスを送るとすればこうだ。「自分もかつては子供だった」ということをいま一度考えろ。子供の身長が80cmであれば、その高さの目線になれるかどうかですべてが決まる。森でも川原でも公園でも家の中でも、どこであれ、子供の目線になれば目の前の世界が変わり、そこで初めて見えるものがあるのだ。子供に対して、過剰なかまい方をするあなたは、「自分の高さ」からだけで子供と対話していないだろうか。教え導くことにのみ過剰な責任を感じていないだろうか。だとしたら、一歩引いて考えてほしい。親は子供から多くのことを学ぶ。教えているつもりが、実は自分が教えられている。子育てとはそういうものだ。子供の五感は鋭く、感じたことをストレートに話す。おいしいものには素直においしいと言い、おいしくなければ、素直にそう言う。面白いことには自然と目を輝かせる。そこには何の損得勘定もない。大人が忘れてしまっていることを子供が教えてくれる。子供から親がしつけられることは、ことのほか多いのである。子供の教育に迷ったら自分が子供だったことを省みることだ。そして、必ず「子供の高さ」で対話すること。子供のころに観た、映画「(注2)ベルリン・天使の詩」や「(注3)赤い風船」は、大人になって改めて観ると、また違った見え方をするものだ。幼少時代の気持ちを思い返せば、自ずと子供との接し方も変わるはずである。
 だが一方では自分が子供にとって、お手本とならねばならない。食べ方や話し方、そして生き様すべてが、である。子供は親を見て育つ。私が父親から厳しく育てられたように、自分の子供を育てることはない。しかし、私は子供に自分の生き様をありのままに見せる。重要なのは、そこで自分が筋の通った生き方をしているかだ。その生き様に芯があるか、である。父親が自分の人生を誇れるなら、それは子供へと自然に伝わるはずなのだ。女は子供を産み、本能的に女から母親になる。しかし、男は違う。子供を授かったとはいえ、それだけでは父親にはなれない。子供と暮らしていく中で、次第に父親として成長していく。最も大切なのは「子供の目線で子供から学ぶ姿勢」だ。コツではなく、それは心がけ。たったそれだけで、目の前の世界は変わり、子育ても変わる。そうすれば、父親の威厳を取り戻すなど造作もない。


 
(注1) 「ピエール・カルダン」
フランスのファッションデザイナー。前衛的なスタイルでオートクチュールブランドを立ち上げ、1970年代に一世を風靡した。


(注2) 「ベルリン・天使の詩」
ヴィム・ベンダース監督による、1987年公開のフランスと西ドイツの合作。ペーター・ハントケ原詞の「わらべうた」が冒頭に流れる。


(注3) 「赤い風船<」
アルベール・ラモリスの脚本、監督作品。1956年カンヌ国際映画祭グランプリを受賞した、同脚本、監督による「白い馬」と併せて、今年の7月にシネスイッチ銀座にてリバイバル公開される。


 
 

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−近ごろのマエストロ−
「世の中、リスクのたらい回しが日常的だ。イージス艦、暫定税率問題に関しても然り。責任の所在が明確ではなく、なんでも曖昧にする。俺がやらなくて誰がやる、という骨のある政治家がいない。筋が通っていないのだ。私は自分が作る服には責任を持つ。自分の生き様をかけた、芯のある服を作る。奇抜なことは一切しない。普通に見えて、ただの普通ではない。そんな服だ。近ごろの世相を感じるにつれ、筋の通った生き様の男が少なくなっているのではないかと不安に思っている」

■みなさんからの質問待ってます!
仕事から家庭、恋愛、そしてファッション・・・・・・etc.、日ごろ読者のみなさんが抱える悩み、疑問など、相談したいことをなんでも教えてください。マエストロ赤峰がズバッと解決いたします!インターネットの場合は[ www.oceans-ilm.com ]へアクセスのうえ、「NEWS」から投稿してください。郵送の場合は官製ハガキに @相談したいこと A氏名(ふりがな) B住所 C年齢 D職業 E電話番号 Fメールアドレス G「オトナ相談室」への感想 を明記し、〒162-0825東京都新宿区神楽坂6-42 オーシャンズ編集部「オトナ相談室係」まで。

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2008年04月09日(水)

繊研新聞掲載「10年着られる大人服」 [繊研新聞掲載記事]

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繊研新聞2008年4月9日付け記事「10年着られる大人服」に掲載されました。

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2008年04月05日(土)

MEN'S EX 5月号 菊池武夫と赤峰幸生が選んだ 古今東西お洒落な男 BEST5 [MEN'S EX 掲載記事]

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菊池武夫さんと赤峰幸生さん。
本誌の連載ページ「Be Buffalo Forever!」のお2人に、歴史上のお洒落な人物をそれぞれ5人づつあげていただき、それぞれの5人について、たっぷり語っていただきました。

 

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■(写真右)菊池武夫氏
・ボルサリーノの帽子
・アメリカンアパレルのジャージ素材ストール
・ヘルムート ラングのミリタリージャケット
・デンツのペッカリーグローブ
・聖林公司のカーゴパンツ
・オールデンのコードバンタンカーブーツ

■(写真左)赤峰幸生氏
・トゥータルの’50年代製アスコットタイ
・Y.アカミネのフレスコ織りシャツ
・アカミネロイヤルラインのシアサッカーパンツ
・デッドストックのフランス製ホーズ
・ニュー&リングウッドのスリッポン

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MEN'S EX大賞 【第1位】

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菊池さんが選んだ古今東西お洒落な男第1位は・・・
アーネスト・ヘミングウェイ
ライフスタイルを反映したスタイルに定評あり
1899年、米イリノイ州生まれ。小説家。代表作は「武器よさらば」、「老人と海」など。’54年、ノーベル文学賞受賞。私生活では、趣味のアウトドアやハンティングなどのライフスタイルを反映した、アバークロンビー&フィッチのサファリジャケットなどを愛用していました。’61年、銃で自殺。


赤峰さんが選んだ古今東西お洒落な男第1位は・・・
ウィンザー公
当時の常識を覆した稀代のウェルドレッサー
1894年〜1972年。’36年、英国王室の王位を継承し、エドワード8世となるも、女性との恋を優先して1年経たずに退位を決意。ウィンザー公となります。稀代の洒落者として知られ、今では当たり前の、グレナカートチェックスーツにスエードのブローグシューズを合わせたのも、彼が最初です。
 

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■お2人が心底お洒落だと思った歴史上の5人の人物とは?
M.E.  今回のテーマは、「お2人が選んだ古今東西お洒落な男BEST5」です。事前にアンケートを記入していただいたわけですが、それによると、タケ先生の1位はヘミングウェイです。
菊池  ヘミングウェイの作品は子供のときから読んでいて、長編はもちろんそうなんですけど、短編も素晴らしくて、凄く共感できるんです。彼の作家として生きてきた証が、彼の風貌、服の着こなしに強く表れているんですよね。海外の戦場に出掛けたり、ハンティングや釣りを趣味にしていたりと、何かとアクティブなイメージがあります。実際、彼のファッションとしてパッと思い浮かぶのはサファリの姿です。
赤峰  今日の着こなしはまんまヘミングウェイといった感じですね(笑)。
菊池  かなりアレンジはしていますけど、彼をテーマに今っぽく着るんだったらこんな感じかなと。
赤峰  確かにヘミングウェイといったら、今日のタケ先生の格好みたいなサファリのイメージがありますよね。
菊池  そうですね。サファリの格好をイメージしながら、軍服でアレンジしてみました。アフリカの砂漠の砂嵐を防ぐ意味を込めて、いつものルイ・ヴィトンのスカーフを中に巻いて、その上にスカーフを中に巻いて、その上にスカーフを二重に巻いているのがポイントです。
M.E.  赤峰さんの1位はウィンザー公です。
赤峰  ウィンザー公っていうとスーツスタイルばかりがクローズアップされていますけど、僕の中ではひょうきんな人だったんだなというイメージがありまして。普通の人はやらないような合わせをするんですよね。(持参した写真の切り抜きを見せて)モノクロなのでわからないですけど、色のトーンを合わせながらパターン・オン・パターンとかにしていると思うんです。国を代表してのオフィシャルな場と普段着とでは、だいぶ差があったんだろうなって。堅い中にもおふざけがあるところが結構好きですね。
菊池  これはウィンザー公がやっているから成立しているっていうのもあるし、英国っていうよりアメリカに移ったあとの着こなしかなって感じですよね。それにしても、ギンガムチェックを選ぶあたりはサスガですね。
赤峰  “すべての道はロンドンに通じる”じゃないですけど、アメリカ的な表現やイタリア的な表現もあるけれども、もともとは英国だしロンドンだし、いってみればバッキンガム宮殿だし、ウィンザー公のスタイルに行き着くんですよね。
菊池  今流行しているアメリカンスタイルだって、もとをたどればほとんど英国のものですからね。

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菊池武夫さんが選んだ古今東西お洒落な男 BEST5

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MEN'S EX大賞 第2位
ジョン・F・ケネディ
品のよいスーツスタイルが好感度大
1961年、43歳の若さでアメリカ大統領に就任。ハーバード大学出身ながら、彼が好んで着用したボタンダウンシャツを、東部のエリート色が強いという理由で、公の場では着用しなかったという逸話も。2つボタンのブリティッシュスタイルのスーツを好んで着用していました。'63年、ダラスにて暗殺。

 
MEN'S EX大賞 第3位
白洲次郎
サヴィル・ロウのスーツを凛と着こなした日本人
1902〜'85年。英ケンブリッジ大学留学中からブガッティやベントレーを乗り回し、戦後GHQ支配下の日本で吉田茂首相の側近として活躍。185cmの長身がサヴィルロウのヘンリー・プールで仕立てたスーツを着こなしたその姿はあまりにエレガントです。

 
MEN'S EX大賞 第4位
ジャン・コクトー
パリの老舗メゾンの服を愛した芸術家
1889年パリ生まれ。画家、詩人、作家、劇作家、映画監督など、さまざまな顔をもつ前衛芸術家。アルニスやランバンの服を好み、ベルルッティのビスポークシューズなどを愛用していたことでも知られています。全身を白の細身の服でまとめた写真のスタイルもまた、彼の内面が滲み出ています。1963年没。

 
MEN'S EX大賞 第5位
ジャン・リュック・ゴダール
フレンチテイストのジャケットをニヒルに着こなすのが彼のスタイル
1930年パリ生まれ。ヌーヴェルヴァーグの旗手であり、世界でも最も有名なフランスの映画監督。代表作は「勝手にしやがれ」、「気狂いピエロ」ほか多数。お2人の対談内に出てきたように、まさに写真のようなジャケットファッションが彼のスタイルです。

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M.E.  なるほど。タケ先生の2位はケネディ。
菊池  僕はケネディのスーツの着こなしが好きなんです。襟幅とかシェイプの仕方とかがアメリカっぽくないし、かといってヨーロッパかというと・・・・・・。僕にはキルトの上に着ているジャケットのような、スーツの着こなしに映るんです。彼の場合、アメリカそのまんまじゃないんですよね。当時は3つボタンが全盛だったんだと思うんですけど、彼は2つボタンのスーツを着ていた印象が強いですし。
赤峰  そうですね。ケネディは僕も好きで、イギリスのモデルの誇張感をなくしてレギュラーな感じにしたスーツを着ている感じですよね。アメリカのナチュラルショルダーとかナンバーTモデルのボックス型というよりは、適度にウエストがシェイプされたブリティッシュレギュラーモデルみたいなね、そういう感じがするんです。ロバート・ケネディもみんな同じような感じでしたよね。
菊池  ええ、ケネディって、アイッリッシュ系の大統領じゃないですか。アイリッシュなイメージはありますよね。
M.E.  では次、赤峰さんの2位、コクトーです。
赤峰  ブリティッシュとかフレンチとかそういう括りではなくて、アーティストとして極めたひとつのスタイルみたいなものがありますよね。上襟が大きいバルカラーのジャケットみたいなのを、白シャツに常にブラックタイで合わせるという独自のスタイルがある。パンツが凄く細くて、それにイギリスのだと思うんですけど丈が短めのブーツをビシッと合わせているのが彼のスタイルです。
菊池  彼は顔が細いし、洋服のシェイプの仕方とか見ていると、ちょっと女性的な感覚もあるんですけど、カフスの出し方とかもう絶妙ですよ。
赤峰  あれはもう絶妙です。アーティストな着こなしのクラシックとでもいうのかな。
菊池  昔だからセオリーはあったんでしょうけど、アーティストとしてそれを崩そう、崩そうとしているのが、彼の着こなしに表れているんです。最初コクトーのところにネイビーブレザーの姿が印象的なアンディ・ウォーホルを入れようとしたんですけど、やっぱり好きなのはコクトーなんですよね。コクトーはエレガントですから。ウォーホルの着こなしはアーティストらしくはあっても、エレガントではないんですよね。
M.E.  次は第3位の白洲次郎さんです。
菊池  お会いしたことはないのでわからないのですが、町田の武相荘に行ったときにいろいろ洋服を見せてもらって、彼がサヴィル・ロウのヘンリー・プールで仕立てたスーツを着させてもらったことがあるんです。それが体にピタッと合ったのが印象的でした。それと彼は性格が変わっていますよね。反骨精神が旺盛だし頑固だし。そういうのにも惹かれますし、それと顔が美しい。日本のウォーレン・ビューティみたいなね。Tシャツ姿で写っている有名な写真があるでしょう。彼の生き方とかが滲み出ていて、カッコいいなって思います。Tシャツ1枚でもサマになるんです。
赤峰  この人は1本筋が通ったものをもっていますよね。夏目漱石とか吉田茂とか白洲次郎とか、イギリスの流儀を学んで日本人のプライドで生き抜いた人っていうのかな。ひとことでいうと毅然としていますよね。あらゆるシーンに対して毅然とした態度で臨むから、あるときは喧嘩っ早いだろうし、男気にあふれているだろうし、でもジェントルマンだっていう。
M.E.  よくわかります。次、赤峰さんの3位、ジャンニ・アニエッリです。
赤峰  アニエッリね。これはなんていうか、ひと言でいうと伊達っていう。伊達を極めたイタリア人なんですよね。今でいうクラシコイタリアとかいうのではなく、英国のひとつのスタイルをイタリア人として伊達に着るっていうのはこういうことなんだというのが感じられます。シャツのカフスの上から腕時計をしたり、タイを上着の外に出したり、自分の伊達を極めた人という意味ですごい人だなっていうのがありますよね。
菊池  確かにジャンニ・アニエッリは数々のオリジナルの着こなしのスタイルをもっていましたよね。ジャン・コクトーみたいなアーティストとは違うんだけど、並では嫌だっていうのがあって、オリジナルのスタイルを築いていましたよね。
赤峰  でもそれが何故できるかっていうと、基本ができているからなんです。基本ができているから崩せるっていう。

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赤峰幸生さんが選んだ古今東西お洒落な男 BEST5

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MEN'S EX大賞 第2位
ジャン・コクトー
これぞ、コクトーのスタイル!
タケ先生の4位に対し、赤峰さんはコクトーを2位でセレクト。「フランス的粋の本質を学べた人。特にジャケットインしたニットの着こなしとブラックタイの合わせがカッコいい」と赤峰さん。写真も無造作に挿したチーフが、実にエレガントな雰囲気を醸し出しています。

 
MEN'S EX大賞 第3位
ジャンニ・アニエッリ
さまざまな自分流を生んだ男
1921年〜2003年。前フィアットグループ会長。サルトのスーツにブルックス ブラザーズのボタンダウンシャツを、襟ボタンをわざと外して合わせたり、スーツにドライビングシューズを合わせたり、数々のオリジナルな着こなしを披露。今でも伊ではカリスマ的人気。

 
MEN'S EX大賞 第4位
ハンフリー・ボガート
トレンチコートの着こなしでは右に出る者なし
1988年〜1957年。映画俳優。代表作は「マルタの鷹」、「カサブランカ」など。トレンチコートの襟を立ててベルトを前でギュッと縛ったボギースタイルは、今もトレンチの着こなしのよき手本。赤峰さんも若かりし頃、その着こなしを随分と真似したそうです。

 
MEN'S EX大賞 第5位
清水幾太郎
赤峰さんに影響を与えた学者の叔父
1907年〜'88年。社会学者、評論家。スーツやネイビーのブレザーを日本橋の丸善で誂え、服も同店で買い求めていたそう。多数の著書も高い評価を得ています。赤峰さんの叔父にあたります。写真はローマで撮影したもの。

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M.E.  タケ先生の4位は先ほど出てきたコクトーなので、次は赤峰さんの4位、ボギーことハンフリー・ボガートです。
赤峰  ボギーはね、非常にヤクザなところがいい。特に「カサブランカ」は若い頃に観て、最後の「君の瞳に乾杯!」っていうセリフに最高にしびれましたね。
菊池  使いました?
赤峰  かなり使わせてもらいましたよ。使いすぎたかなっていう(笑)。でもね、男の中にあるヤクザ的要素と、そういうニヒルというかシリアスな部分をもちたい自分を、ボギーと重ね合わせてしまうっていうのはあります。
菊池  僕はね、ハンフリー・ボガートって大好きなんです。メンズビギの会社を立ち上げたとき、店にボガートの写真を絵のようにして飾っていたくらいですから。やっぱり男として憧れるものがあります。声も渋いし、仕草もカッコいい。
赤峰  日本でいうと高倉健みたいなイメージかな。
菊池  そうそう、だぶりますね。禁欲的っていうか、ストイックな感じですよね。
M.E.  着こなしでいうとトレンチですか?
赤峰  まぁトレンチでしょうね。あとは帽子の被り方ね、あれはボギーならではです。スーツスタイルはイメージとしてあまり出てこないですね。
菊池  「マルタの鷹」でしたっけ。モノクロだからわからないですけど、ダークスーツを着ていましたよね。
赤峰  たぶんブラックスーツですね。
M.E.  では次、タケ先生の5位、ジャン・リュック・ゴダールです。
菊池  ゴダールね。ゴダールも不良っぽい。
赤峰  フランス映画の中で、従来の価値観を壊した人ですよね。
菊池  ほかにもたくさんいますけど、やっぱりゴダールなんです。世界的な価値観を変えましたよね。それと映像がもの凄く美しい。なんであの顔からあんな美しい映像を撮れるのか不思議でしょうがない。自分があまり細い顔をしていないんで、赤峰さんは細い顔をしているじゃないですか。細い顔の人ってなんか好きなんですよね。
赤峰  見えるような見えないような、あの透け具合が独特のサングラス。レイバンのようなサングラスじゃなくて。
菊池  セルのサングラスを掛けていますよね。ちょっと禿げ上がった額に黒メガネをかけて無造作にジャケットを着て立っているのを見たことがありますけど、やっぱり凄く雰囲気がありました。
赤峰  まさにフレンチな感じですよね。ラペルが細くて肩幅が広いジャケットを着ているイメージがありますけど、ゴダールって華奢だから襟が抜け気味で、ちょっと羽織っている感じがするんだけど、それが逆に決まるんですよね。
菊池  変な言い方をすると、貧相になるギリギリの格好なんですよね。それが逆にアーティストっぽいっていうか、カッコいいんです。
M.E.  赤峰さんの最後は清水幾太郎さん。
赤峰  僕の叔父の学者なんです。彼はネイビーのブレザーをよく丸善で仕立てていたんですけど、いつもタイをビシッと締めていて、どんなに暑くても絶対に上着を脱がずに凛としていたイメージがありまして。当時丸善で売っていたバーバリーのトレンチコートを譲ってもらったことがあって、それがこの世界に入るきっかけにもなったし、私事で申し訳ないんですけど、子供の頃から彼にはそういった意味で凄く影響を受けてきたので、入れさせてもらいました。
M.E.  ありがとうございました!

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MEN'S EX5月号記事「俺の人生で得した買いモノBEST3」 [MEN'S EX 掲載記事]

長く愛用できる物こそが“本物の証”
 
MEN'S EX大賞 【第1位】

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英国王室御用達のステーショナリーブランド。赤峰さんの便箋、封筒には“Y.Akamine”が。

スマイソン ロンドンのレターセット
受賞理由 : かれこれ20年以上使い続けています
「私自身、万年筆で字を書くことが好きなので、大事な人へ手紙を送る際は、必ずこのレターセットを使っています。ボンドブルーの色合いも気に入っていますし、とにかく書きやすいのが魅力。PC時代の今だからこそ、直筆の手紙は相手にも誠意が伝わりますしね」

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(→)自分だけの“モノ”が作れます。
好きな色を選んで、文字やロゴを入れるオーダーも可能。
http://www.smythson.com/

 

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現在買えるローデンクロスジャケットはこちら。6万3000円(マイ・コーポレーション)

MEN'S EX大賞 第2位
ローデンクロスのニットジャケット
受賞理由 : カジュアルなのにエレガント
「7年ぐらい前に海外で購入したのですが、厚手でシワになりにくく、伸縮性もありながら非常に温かい。寒い時季は、毎日のように着ていますね。シャツの上にブレザー的な感覚で羽織ってもいいし、いろいろ使い回しの利く1着だと思います」
 
 
 


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ミラノにあるショップのオリジナルのブリーフケース。(日本未発売)

MEN'S EX大賞 第3位
ペルックスのオリジナル ブリーフケース
受賞理由 : 出張時には必ず持っていきます
「デザインに特徴がある訳ではないのですが、アコーディオンの仕切りで荷物も入れやすく、使い勝手は◎。10年ぐらい使っていますが、壊れたことがなく、無造作に下に置いても平気で、それが逆に格好よかったり。そんな頑丈な作りも気に入っています」
 
 

 
◆赤峰さんの“思い出遺産”
フローシャイムのインペリアルシューズ

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30年経っても履き続けられます 
「30年前に購入した靴ですが、ソールは2、3回替えた程度。それでいて、いまだに履き続けられるという、作りのよさは相当なもの。いかにもアメリカらしい存在感をもちつつ、シャープさも備えた、かけがえのない1足です」

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MEN'S EX5月号記事「イタリアを象徴する本格靴ブランド ストール・マンテラッシがみんなに愛される理由」 [MEN'S EX 掲載記事]

ファッション界の大御所もマンテラッシをご愛用!

日本のファッション界の大御所たちには、ストール・マンテラッシの愛用者がたくさんいらっしゃいます。というわけで、古くからマンテラッシの靴を履いており、マンテラッシには一家言ある大御所に、その魅力を語っていただきました。
 

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「古きよきイタリアのカジュアルエレガンスの薫りがするんです」
 日本でマンテラッシといえば、まずこのおかた、赤峰幸生さんです。
 「出会ったのは20年くらい前かな。僕の中でマンテラッシはカジュアル靴のイメージがあって、特に好きなのは、カモッショと呼ばれるヌバックタイプのスリッポン。もうずっと上級なスニーカー感覚で愛用していて、何足も履きつぶしては、買い替えています。20代の頃に観た映画の中で50代とか60代のお洒落な人たちが履いていて、古くからイタリアの文化に根ざしてきた靴なんです。どこか英国的な要素がありながらも、ラテンの文化からしか生まれてこない軽さもいい。カジュアルでもドレスのマインドがあるし、5ポケットのパンツにも合う懐の深さがある。そして何よりも、古きよきイタリアのカジュアルエレガンスの薫りが残っているところが好きなんです」

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革の編み紐がアクセントのグレイスエードのスリッポン
「今も昔も、マンテラッシといえば、夏に素足で履ける軽快な作りの靴が好き」と赤峰さん。サドルについた革の編み紐がアクセントになったスエードスリッポン。9万8700円

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2008年03月29日(土)

エスクァイア日本版「LAST(vol.11)」5月号臨時増刊(男の靴雑誌) [LAST掲載記事]

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シネマに学ぶ、紳士の装い
参考書のようなドレスマニュアルを参照しても、実は装いが巧くなるわけではない。
服に付帯する「生活」や「習慣」を知ってこそ、服は自分のものになる。
その範を映画に求めるべく、3人の達人たちに集まっていただいた。

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[Yukio Akamine]
東京・目黒生まれ。1974年に(株)トラッド(WAY-OUT)設立に参画。'82年には(株)グレンオーヴァー設立に参画。'90年に(株)インコントロ設立。自身のブランド「Akamine Royal Line」の他、大手アパレルブランドのコンセプトや海外服地の企画を手がけ、クラシックスタイル構築一筋に活動。

[Yuhei Yamamoto]
東京・渋谷のテーラーケイド主宰。アメリカンスタイルを核として、オーセンティックなメンズウェアを追及している。そのスタイルは新宿伊勢丹「ザ・スタイルゲイト」でも展開している。映画、ジャズに精通し、関連資料のアーカイヴも充実。また近年はロードバイク(自転車)に情熱を注いでいる。

[Akira Sorimachi]
1966年東京生まれ。'90年代よりイラストレーターとして活動。現在は雑誌や広告のイラストの他、インスタレーション等幅広く活躍している。昔日のアメリカやヨーロッパの雑誌が載せていたような雰囲気の絵で知られるが、ご本人もまた、クラシックスタイルを愛するウェルドレッサーである。
 
 

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『ナポリ湾』−「皆が思うクラシコイタリア、アイビーがあの映画に凝縮している」(山本)

山本祐平  僕らの世代は、若いころから早く成熟して、いいリアルクロージングを着たいと思っていました。若づくりなんて必要ない、早く大人の男になりたいと。街で遊ぶときも飲みに行くときも、僕らは背広を着ました、オーダーの服で。そういうのが高いからいいだろうではなくて、ヒップに着たかったわけです。その靴がお洒落だねではなくて、コートの衿の立て方とかがわかってるな、やるね、ヒップじゃないかとか、そういうこと。
赤峰幸生  それは日本人である我々が、外国人、その国の文化の中で生まれ育った人たちの日常の立ち居振る舞いを興味深く見ていたということでしょう。我々は箸文化で、箸を使うことが日常なんだけど、彼らはナイフとフォーク。ナイフとフォークさばき、それが結婚式のときに初めて持つんじゃなくて、日常で使っているから上手い。それと同じように服を“さばいて”着ていると。そのさばき感が、今風な言葉で言うとリアルなんだと。さらに反復の中でそれが歳と共に自分の身に付く。タバコの吸い方、酒の飲み方、食べ方、脚の組み方、歩き方・・・・・すべての動作や目線が自分の中で板に付いてくる。最初はぎこちないんだけど、ぎこちないなりに繰り返していくうちに、次第に高い服やブランドの服を着ていなくても、なんとなく味があるよねという感じになる。ある程度のクオリティであれば、フルオーダーの服だからいいとか、既製服だから悪いとか、そんな論理はないのです。なんの変哲もないけれどいい、というのはその人のさばき方がうまいということなんですね。

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『アニーホール』−(ウッディ・アレン)、あれは、活字的なインテリジェンスがある人たちが好むもの、というか」(赤峰)

−−−−そうした服さばきで感心した映画や俳優は?
赤峰  若いころはジョージ・ペパードやケイリー・グラントが好きで好きでしょうがなかった。それからヨーロッパの俳優に移行していって、19歳、20歳くらいに一番はまってたのはマルチェロ・マストロヤンニ。自分でもナンパ師風の、白の綿ギャバのスーツをつくった。
山本  僕はロマンティストなんです。男のロマンっていうものをソリマチ君は絵で表現するわけだけど、僕はテーラーという天職を見つけた。そこでシーンをつくるわけです、お客様の。その人が仕事をしているシーンや旅に出ているシーン、それに合わせて僕は服をオーガナイズしていきたい。そして、そこには映画の残像がやはり残っていて、それをお客様と共有するのがすごく好き。たかが服、されど服。着るものは単なるお洒落とかじゃなくて、映画が教えてくれたのはロマンティックな部分だとね。例えば女性がドレスアップしたときは、ダークスーツでケイリー・グラントみたいに、フッと後ろに立って椅子を引いてあげるとか。そういう常識だったりマナーだったり、ナルシスティックかもしれないけど、そうしたことが大事。

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『男と女』−「トランティニヤンのカジュアルは大好き。アヌーク・エーメもいいね」(山本)

赤峰  マナーを学ぶのに、映画は素晴らしい教本。例えば向こうの連中は、脚を組んで食事している奴ってまずいない。または綺麗なナプキンの使い方、パスタを食べるときにナプキンをピッとはねながら、こう・・・・・自分のリズムなんだよね。そういうのがかっこいい。
山本  英国人はトラウザーズのポケットに手を突っ込まない。でもアメリカ映画ではコートを持つときにタバコを吸いながらポケットに手を突っ込んで、ティファニーに入っていく。そういうものは映画を無意識に真似している。タバコの吸い方一つにしても、コートの着方、ジャケットの着方でも・・・・・僕が言いたいのはコスプレとか猿真似じゃなくて、所作というものが実は映画の中にたくさんあって、皆影響を受けているということ。僕らはそういうものを見るプロだから、それを言い切らなきゃいけないと思う。コートの衿を何げに立てるとか、ボタンの締め方にしても。

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−−−−特定のシーンでこれは真似しようと思われたものは?
赤峰  いまだにやっちゃってるのが僕のカードのサイン。これは「太陽がいっぱい」で、アラン・ドロンがタバコをくわえながら何度もフィリップのサインを練習する、あのサインが僕のサインのスタイルになっています。あとは「鬼火」で、モーリス・ロネがベッドの上にネクタイを並べて、指で弾くようにして選ぶんだけど、あれはいまだに自分がネクタイを選ぶときにやりますね。
山本  「太陽がいっぱい」は、色とりどりの素材なんだよね。リネンやコットン、シルクとかプリントが出てきたり、スクールジャケットも、白のモカシンの靴も、コットンパンツも、シャンブレーのシャツも、素材のオンパレードなんだ。そしてリゾート地の、太陽の光と服の色とのコントラスト、そういうものは後の僕らが服を作るときに、何度も見直すことになる。

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『太陽がいっぱい』−「この映画って、色とりどりの素材なんだよね」(山本)

赤峰  確かに。その場所・土地という要素はすごく大きい。
山本  英国も含めてヨーロッパ的なスタイルには、石畳の街という要素がある。例えば「ナポリ湾」の、クラーク・ゲーブルがナポリに到着したシーン。その洗練された感じで、ナポリの弁護士役のヴィットリオ・デ・シーカが泥臭く見えちゃう。どっちがエレガントかは差がつけにくいんだけど、田舎の顔役とニューヨークから来た弁護士、それがあの場面でわかるわけ。デ・シーカの服を見ると、すごいソフトな手で縫ったようなふくらみが付いた丸っこい服。着こなしも白の手袋をしたりとか、ホンブルグハットをかぶったり、英国的なものが影響したナポリのクラシコイタリアスタイルです。かたやゲーブルはTVフォールドでハンカチを入れて、ボタンダウンのシャツを着ていたりと最先端のアイビー。そのうえ水道の水が飲めなくてウィスキーで歯を磨くとか、都会人の奇妙な部分、そういうことも含めて文化の違いがある。どっちがいいとか悪いとかではなくてね。だいたい、あのゲーブルだとパリの街も似合わないだろうし。

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『甘い生活』−「一番はまっていたのはマストロヤンニ。白の綿ギャバのスーツ、つくったね」(赤峰)

映画は街を、装いを描いて、人生を伝える。
−−−−フランス映画で、気になった装いはどんなものですか。
山本  僕はフレンチ・フィルム・ノワールだね。モノクロームの世界のダークスーツとトレンチコート、バルマカーンコート。ジャン・ギャバン、リノ・ヴァンチュラ。でも映画的に一番チャーミングなのは「男と女」かな。ジャン=ルイ・トランティニャンのカジュアルが大好き。トランティニャンのなんてことのないフランネルのパンツとチャッカブーツにカシミアのセーターとか、そういうのがいい。アヌーク・エーメもいいね。ランチコートの着方なんかは男のスティーヴ・マックイーンより、アヌーク・エーメを見て影響を受けた。

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−−−−赤峰さんは、フランス映画だと印象的な作品はありますか。
赤峰  「華氏451」、オスカー・ウェルナーの、フランス的ニットの着方とはこうなんだみたいなところ。ジャンヌ・モローとのシーンで、ドロッとリブのあまい、あの感じは忘れられない。
山本  ニットと言えばウディ・アレンとかの、コーデュロイの膝の抜けたパンツにネルのシャツ着て、シェットランドのセーターにツイードのジャケットという合わせもある。
赤峰  ナチュラルショルダーの、ポール・スチュアートやサウスウィックあたりのジャケット。夏でもツイードっぽいジャケット着て、デロッとした感じで、という。あの時代のウディ・アレンと自分の中でダブるのはアンディ・ウォーホルだね。ウォーホルとウディ・アレンって全く違う世界のふたりなんだけど、マンハッタンっていう街が産み落とした一連の人物という。マンハッタンなくしてあの人たちはあり得ないと感じるね。
 山本さんも僕も若いときに感動したものというのは理屈じゃないから、いくつになっても匂いを記憶しているのと同じように覚えていて。現在でも何かに相対したときにそれが蘇る。若いときの感動を嗅覚のそれのように記憶装置の中に入れておくことは大事だと思うね。
山本  映画の中の台詞だとか、映画の中の父親像・男性像というのが、(自分にとっては)黙示録。例えば「ゴッドファーザー」に出てくる台詞から、男ってこうやって生きなきゃダメだなといったことを知る。そういうことって親や上司からより、映画の中の男のイメージから色々と教わることがあるんじゃないかな。例えば男と女の揉め事には口を出すな、なんて言葉とか。服ももちろん、生き様とか人生観に至るまでね。

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「ナポリ湾」
クラーク・ゲーブル、ソフィア・ローレン主演の、ナポリを舞台にしたラブコメディ。死んだ兄の財産整理にナポリを訪れたニューヨークの弁護士が、兄の子を養育する地元の女性を見初める。(パラマウント・ジャパン)

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「ティファニーで朝食を」
トルーマン・カポーティの小説をベースとした作品。主演はもちろんオードリー・ヘップバーン。コールガールと作家の恋を「上品に」演じた。ヘンリー・マンシーニの音楽も美しい。(パラマウント・ジャパン)

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「アニー・ホール」
ウディ・アレンとダイアン・キートンによる、'77年公開の恋愛映画。コミカルで切ない都会の男女の関係が描かれる。作品賞ほかアカデミー各賞を受賞。(20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン)

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「男と女」
クロード・ルルーシュ監督、アヌーク・エーメ、ジャン=ルイ・トランティニャン主演。フランシス・レイによる主題歌はあまりにも有名。冒頭からスタイリッシュな映像美が際立つ。(ワーナー・ホーム・ビデオ)

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「太陽がいっぱい」
ルネ・クレマン監督、アラン・ドロン主演の青春映画。地中海沿岸の美しい風景のもと、人間の本性とそれゆえの愚かさが描かれる。ニーノ・ロータの音楽が映像美に華を添える。(ジェネオン・エンタテイメント)

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「甘い生活」
フェデリコ・フェリーニ監督の代表作のひとつ。マルチェロ・マストロヤンニ演じるローマのゴシップ記者の、華やかで退廃的な日常を描いている。そのラストシーンはいまなお謎めいている。(アイ・ヴィ・シー)

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赤峰 幸生 (あかみね ゆきお)

● イタリア語で「出会い」の意のインコントロは、大手百貨店やセレクトショップ、海外テキスタイルメーカーなどの企業戦略やコンセプトワークのコンサルティングを行う。2007年秋冬からは『真のドレスを求めたい男たちへ』をテーマにした自作ブランド「Akamine Royal Line」の服作りを通じて質実のある真の男のダンディズムを追及。平行して、(財)ファッション人材育成機構設立メンバー、繊研新聞や朝日新聞などへの執筆活動も行う。国際的な感覚を持ちながら、日本のトラディショナルが分かるディレクター兼デザイナーとして世界を舞台に活躍。 Men’s Ex、OCEANSに連載。MONOCLE(www.monocle.com)、MONSIEUR(www.monsieur.fr)へも一部掲載中。

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