AKAMINE BLOG

メンズファッションディレクター 赤峰 幸生のBLOGです。

2013年10月29日(火)

サザエさんをさがして 2013年10月26日(土)掲載 [朝日新聞掲載記事]

画像(180x33)・拡大画像(640x118)

朝日新聞土曜版「be」には、サザエさんの題材まつわる記事が毎号掲載されています。
今回のお題は1969年3月7日の掲載作「タートルネック」。
赤峰がタートルネックのルーツなどについて語っております。

画像(140x320)・拡大画像(280x640)

街角や電車内で、外国人に話しかけられたら、どうしますか。外国語が達者ならともかく、多くの日本人は困惑するのでは。今回の掲載作でマスオは、とっさにセーターで顔をかくしてしまう。こんな芸当ができるのは、タートルネックだからだ。

そこで、青b「男の流儀 粋を極める」でおなじみのファッションディレクター赤峰幸生さんに、タートルネックのイロハを教わりに行った。

赤峰さんによると、タートルネックは19世紀後半、英仏海峡にあるガーンジー島の漁師の仕事着がルーツらしい。寒い海で働く父や夫の防寒、防風のために、島の女たちはセーターの首の部分を長く編み上げた。それぞれの家ごとに編む模様が違ったという。「遭難したときの身元確認のため、という悲しい歴史があります」と赤峰さん。

実用品だったタートルネックはおしゃれの面でも注目され、日本でも1950年代後半あたりから、愛用者が増えてきた。「三島由紀夫、黒澤明、伊丹十三……。アート系やフリーランスの人が多かった。組織と一定の距離を持つ証しでしょうか」。在野の歴史家で「都市の論理」で一世を風靡した羽仁五郎も、タートルネックが似合う男だった。

偶然だが、掲載作と同じ日付のアサヒグラフに「怒れる老人 羽仁五郎」という特集があった。当時は大学紛争が真っ盛り、キャンパスはヘルメット学生であふれていた。そこに、ソフト帽、丈の長いコート、白いタートルネックの羽仁五郎が現れ、マイクを握ると、座り込んだ学生から「異議なし!」の声がとぶ。

画像(193x320)・拡大画像(386x640)

記事は「東に大学の紛争があれば、最後の勝利は君たちのものだとはげまし、西に教室の封鎖があれば、がんばり給えと訴えにかけつける。(略)歴史学者・羽仁五郎氏は、白いタートルネックもさっそうと、バリケードの大学を今日も行く」という文で始まる。

「たしかに大学紛争の頃から、父はよくタートルネックを着ていました。学生に呼ばれて講演に行くときは、いつも白いタートルネックでした」と長男で映画監督の羽仁進さん(85)は回想する。ネクタイに象徴される体制への反抗の意味もあった。白が多かったのは「白のタートルネックは、自分を励ます、胸を張って生きる、という気持ちの表れだったように思います。父は自分に自信を持っていましたから」。

作家・吉岡忍さん(65)もタートルネックを愛用した。その頃はやったサファリジャケットにタートルネックはよく合った。「おしゃれというより、ずぼらだったからかな。でも、タートルネックは素肌の上に着るから、フィット感、肌感覚が、人にも世の中に対しても素の自分を見せたい、という当時の自分の気持ちにつながっていたように思う」

ところで、赤峰さんは掲載作を見て「もしかしたら長谷川町子さんは、『大人は判ってくれない』に影響されたのかな」と言う。ヌーベルバーグの映画監督フランソワ・トリュフォーの長編デビュー作「大人は判ってくれない」(59年)は、反抗期の少年を描いた映画で、当時、日本でも評判になった。さっそくビデオを借りてきた。

いつも黒っぽいタートルネックのセーターを着ている少年が、盗みで警察に捕まって署の留置場に入れられる。そこでタートルネックを鼻のあたりまで引き上げ、外界とのコミュニケーションを拒絶する印象的なシーンがあった。マスオも、いささか子供っぽいが、コミュニケーション拒否の意思表示だ。赤峰さんの想像通りだとしたら、長谷川町子さんは、かなりの洋画通だったことになる。

(牧村健一郎)

========================================
朝日新聞社に無断で転載することを禁止します
========================================

Posted by インコントロ STAFF at 10時51分   コメント ( 0 )

コメント

コメント投稿フォーム

名前:(この情報をCookieに保存させたい場合にチェック)
メールアドレス: (表示はされません)
URL: (名前にリンクされて利用されます)
コメント:
パスワード: (削除時に利用)

ページのトップへ ページのトップへ

10

2013


    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

PHOTO

朝日新聞be on Saturday『赤峰幸生の男の流儀‘「トニック」という服地について’』2012年12月15日(土)掲載

朝日新聞be on Saturday『赤峰幸生の男の流儀‘「トニック」という服地について’』2012年12月15日(土)掲載

「男のたしなみ講座」で講演

「男のたしなみ講座」で講演

赤峰さん的スーツの着こなしテク

赤峰さん的スーツの着こなしテク

検索


カテゴリーリスト

最近の記事

最近のコメント

リンク集

RSS1.0

[Login]


powered by a-blog
Copyright (C) 2005 INCONTRO Co.,Ltd. All rights reserved.