AKAMINE BLOG

メンズファッションディレクター 赤峰 幸生のBLOGです。

2009年08月24日(月)

OCEANS 10月号連載 AKAMINE STYLE 目覚めよ、日本の男たち! [OCEANS掲載記事]

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マエストロ赤峰の「オトナ相談室」
仕事、家庭、子育て、そして愛……などなど。
30〜40代のオーシャンズ世代にもなれば、少なからず何かしら悩みのタネは持っているもの。
そんな皆様の“駆け込み寺”として開設されたのが、このオトナ相談室。
皆さんの質問にお答えするのは、“人生のマエストロ”こと赤峰幸生氏。
今月も痛快なご意見で迷えるオーシャンズ読者に
救いの手を差し伸べてくれるハズ!
では皆さん、ご一緒に!教えてっ、マエストロ!


今月のテーマ
“男の口説き方”

[今月の質問]
こんにちわ。いつも赤峰さんのお言葉に勇気をもらっている32歳の男です。今回は私の悩みを聞いていただけないかと思い投稿しました。最近、あるメーカーの営業に転職したんです。前職はゲームプログラマー。ひとりでコツコツとやる作業が好きで始めた仕事だったんですが、昨今の不況の影響もあり一年発起して現職に。営業という仕事に携わること自体が初めてでもあったんですが、正直に言って、成績がまったく振るわないんです。上司からは「お前はその場のノリはいいが、最終的に相手をその気にさせる力がない」と言われています。今後のために、ぜひ人を口説く秘訣を教えていただけないでしょうか?(32歳・メーカー勤務・東京都在住・K・Yさん)

 
 

Q.人の口説き方ねぇ.....。大事なのは熱い気持ちでしょっ!あんまり堅く考えないで、女性でも一生懸命口説きましょ!そうですよね、マエストロ!
 そうそう男なんか放っといて、女の子に血道を上げて・・・・ってこの大ばか野郎がっっ!貴様、この暑さで脳みそが蒸発しちまったようだな。思わずノッてしまったではないか。
 社会に出れば、面接や取引先や客のやり取りはもちろん、上司や部下との関係、そして結婚・・・・。投稿者も関心を持たれているように、人生を切り拓くには人を口説き、その気にさせなければならない場面がたくさんあるのだ。
 私は28歳のときにアパレル会社を立ち上げた。自分で会社を興して改めて気付いたが、仕事はまさに口説きの連続であった。服をつくる工場の職人、服を販売する販売店のバイヤーたち、彼らに動いてもらわなければ、仕事は一歩も進まない。しかも当時の私には、何の後ろ盾もない。まさに徒手空拳で、相手を口説き、その気にさせなければならなかった。

Q.うひょ〜。もしやそこで伝説とまでいわれるマエストロの営業トークが炸裂するわけですね!一体どんなサクセスストーリーが聞けちゃうんでしょうか!?
 このスカタン野郎が!!私の人生にサクセスストーリーなどない。あるのは、無数の失敗から学んだ大切な財産だけだ。あれは忘れもしない、30代の半ばころのことだ。コンサルティングの仕事に携わっていた当時、あるアパレル会社との取引の話が舞い込み、喜び勇んで打ち合わせに臨んだ。相手は名のある企業であったが、当時のビジネスは順調で、私は一歩も引くことなく交渉を重ねた。しかし、なかなか相手は首を縦に振らない。粘り強く交渉を重ねたが、最終的に相手の担当者からこんなことを言われた。「話はもうわかった。君は一体いくら欲しいんだね?」。私はその言葉を聞いたとき、「これは負けだ」と直感した。契約の話にばかり気を奪われ、相手の信頼を得るという最も大切なことをおろそかにしてしまっていたのだ。これでは、無礼なことを言われても返す言葉も見つからないはずである。私はこのことを機に、自分の営業スタイルを徹底的に見直すことにした。
 第一に欠点やデメリットも包み隠さずに伝えるように努めた。つまり「できないことはできない」ときちんと言う。例えば洋服のお店に行くとしよう。あなたが店員に「この服は○○には似合うか?××の場面で着られるか?」といくつか質問をする。そのとき「もちろん似合います!」「もちろん、どこでも使えます」とオウムのように繰り返す輩を果たして信頼できるだろうか?人の心理としては「この商品はこういうときは最適ですが、こういうときにはあまり使えないんです」と正直に言ってくれる人物を信頼するはずだ。つまり、営業する商品の長所と同じように短所も伝えることがとても重要なポイントなのである。
 第ニに現場を深く知ること。商品をひとつ売るときにも、そのものが作られている現場を知らないと、その説明はすべて表面的になってしまう。私は工場にお邪魔し、自社の服が作られている工程を一から十まで見せてもらった。そして「ここの工程は面倒だけどね、着心地がよくなるんだ」といった職人さんの言葉を頭に叩き込んだ。こうした現場の生きた言葉は、営業先で自分の商品を説明する際に最高の武器となった。そして何より、自社商品の「価格の理由」についても理解することができた。皆も同じではないだろうか。何か買い物をする際、その値段の理由を納得できることが、購入を決める大きな決断理由となるはずだ。
 よく会社に来るセールスマンでも、人の会社のことをよく調べてくる輩がいる。しかし、そういう輩に限って、自社商品のことをほとんど知らなかったりする。これこそ本末転倒である。顔を洗って出直して来い、そう言いたい。

 

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(→)今月、マエストロが挑戦したのは、なんとロデオマシーン。マエストロが纏うGジャンは、1959年にデビューした「リー」の名作ウエスターナー。登場するなりカウボーイたちのお洒落アイテムとして定着した、不朽の名作であります。ボトムスは、「リーバイス」の501XX。そして、Tシャツは「ヘインズ」のヴィンテージ。いずれもアメリカのウエスタンな気分たっぷりの出で立ち。そこに、イタリアで創業した「スペルガ」のスニーカーを合わせるあたりは、やはり只者ではありません。荒れ狂うマシーンに跨り、振り落とされそうになりながらも必死の形相で耐えるマエストロ。僕らは決してその勇姿を忘れることはないでしょう。
 

Q.す、すごい、すごいっすよ!!お店にそんな店員さんがいたら納得して買い物ができるはず!もしや、コレをマスターしたら、出世街道まっしぐら?ひょえー!
 このツルセコ野郎がっっっ!お前は、そうやっていつもお手軽に答えを知ろうとする。まったく気に入らんが、今回ばかりは読者のために、私流の営業について少しだけ話そう。
 例えば、一枚のジャケットを売るとする。私の場合、まず世間話から入る。これは、「カウンセリング」にあたる。天気でもスポーツの話でもなんでもいい。そこで、その人物と生活観、価値観を探るのだ。
 次に自分の商品が体現する「文化」を語る。私の服が持っている文化とは、英国やイタリア、日本文化に通じる「本当にいい服を末永く着ること」だ。この魅力をストーリー仕立てにして話す。「あなたはいま32歳。しかし、これから30代、40代と過ごしていくにつれ、結婚もするし、子供もでき、オフィシャルな場面に遭遇する機会も多くなるはずです。そんなとき・・・・」と、この服がその人の生活の中でいかに役立ち、長く着られるものかを想像してもらう。このとき、先にも述べたとおり「このジャケットは比較的カジュアルなデザインなので、こういう場面ではおすすめできません」とはっきりとデメリットを伝えておくのも重要だ。
 そして興味を持ってもらえたら、そこで初めて商品の説明をするのだ。ここで言いたいのは、興味を持つとは、私のジャケットが体現する文化と相手のライフスタイルが重なり合うことだ。双方が重なり合って初めて、商品の説明が効果を持ってくる。ディテールや生地、フィット感、自社商品にしかない魅力を伝える。もちろん、それだけの値段が付く理由もだ。あとは買う側に判断を委ねるだけだ。
 そもそも、この営業スタイルは英国やイタリアでの老舗テーラーではごくごく当たり前のことである。だが、大量消費や合理性ばかりが重視されていくなか、こうしたやりとりがいっきに失われたのだ。
 今まで私はこのスタイルで、ひとりひとり顧客を増やしてきた。人間味を大切にしたこうした接客方法は、洋服の販売に留まらず、さまざまな仕事で必ず役に立つはずだ。

Q.な、なるほど、さすがですっ!では、お次はぜひマエストロの巧みな営業トークを聞かせてくださいよっ!ぜひパクリ・・・、いや参考にしたいんです!
 トンチキ野郎っ!!貴様にはまだわからんだろうが、人を口説くよりももっと難しく、大切なことがある。それは、自分を口説くことなのだ。
 私は40代の後半に、ある大企業からコンサルティングの依頼を受けた。プレゼンは大成功し、「ぜひ」とのことだった。だが、私は最初から、その企業のスタイルが私の信条にそぐわない気がしていた。しかし、契約金は破格とも言えるものだった。
 しかし、私は悩んだ末に辞退した。決断させてくれたのは、池波正太郎先生の著書に出てくる登場人物たちだ。鬼平にしろ真田幸村にしろ、世間の価値観や権力に縛られず、己の中の掟や美学に従って生き抜いた魅力的な人物だ。金ではない。私も彼らのように自分を貫き、爽やかに生きよう、と思ったのだ。私は彼らの生き方を自らにプレゼンし、自分を口説いたのだ。辞退したのは、その結果である。
 私は後年になって、自分を口説くことの大切さをしみじみ実感した。あのとき誘いに応じていれば、会社は一時的に大きくなったかもしれない。だが、私の中で、確実に何かが損なわれてしまったはずである。生き方の芯を失うことは、男にとって何よりも情けないことだ。
 自分を口説くことは、己が本当に納得しているかどうかを問う作業である。ある商品に自分が納得していなければ、それを売る相手を説得するには不十分であろう。つまり、人を口説きたいと思うなら、その前にまず自分を口説けということである。
 「人間の数ある才のなかで、私は説得力に一番高い値段を付けたい」。あのロックフェラーがこんな言葉を残している。人を、そして自分を口説くことを。その秘訣をひと言で言うなら、私は腹を割ることだと思う。そしてそこから生まれる本音こそが人を動かす。それで失敗したら、それまでのこと。己を疑うことさえなければ、必ずや、次の好機をものにできるはずだ。
 
 

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−近ごろのマエストロ−
先日、イタリアからアントニオ・リベラーノがやって来た。彼はフィレンツェのテーラー「リベラーノ&リベラーノ」の店主で、私の30年来の親友である。日本に来ると必ずふたりで酒を飲む。話題はたわいのない話がほとんどだが、珍しく服の話になった。私は彼に問うた。「イタリアや英国のように、洋服のジャパンスタンダードはなぜ生まれないのか」。リベラーノは黙り込み、やがてひとつの回答を口にした。「スタンダードとは継続である。しかし、日本にはものや情報が溢れすぎ、スタンダードを確立する環境にないのではないか」。至言である。目の前の流行を追いかけていては、決してスタンダードは持てない。自国の文化や自身の内面に向かうオリジナリティ。これこそがスタンダードの源となるのだ。
 

カウボーイ気分で堪能するテックスメックス料理!
今回の撮影で訪れたのは、東京・恵比寿にあるテックスメックス料理の老舗。400席もある店内は、アメリカ西部やメキシコのキャンティーナ(酒場)を思わせる、活気と陽気溢れる空間だ。ハンバーガーやホームメイドタコス、グリル料理など、ボリューム満点の料理や、豊富なドリンクが楽しめる。注目は、店内に設置された本格マシーン。毎週、日曜日の夜9時ごろになると「ロデオ・ナイト」が開催される。詳しくは以下に確認してください。

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「ゼスト キャンティーナ 恵比寿」
電話/03-5475-6291
住所/東京都渋谷区恵比寿1-22-19
営業11:30〜29:00
[ http://www.zest-cantina.jp ]
 

■皆さんからの質問待ってます!
仕事から家庭、恋愛、そしてファッションetc.・・・・・・、日ごろ読者の皆さんが抱える悩み、疑問など、相談したいことを何でも教えてください。マエストロ赤峰がズバッと解決いたします!本誌ホームページ[ www.oceans-ilm.com ]へアクセスのうえ、トップページから投稿してください。

Posted by インコントロ STAFF at 00時00分   コメント ( 0 )

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朝日新聞be on Saturday『赤峰幸生の男の流儀‘「冬はフランネルであったかく’』2013年1月19日(土)掲載

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