AKAMINE BLOG

メンズファッションディレクター 赤峰 幸生のBLOGです。

2006年12月06日(水)

MEN'S EX 1月号 菊池武夫と赤峰幸生の Be Buffalo Forever! vol.8 [MEN'S EX 掲載記事]

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菊池武夫さんと赤峰幸生さん。
ファッション界の2人の巨匠が毎回テーマを決め、それに基づいてファッションを披露し語り合う、夢の対談連載。

「今月のテーマ」
ダブルスーツの着こなし方

ダンディズムの極みともいえるダブルスーツ。とはいえ、ここ日本ではまだまだ真の意味で浸透しているとはいい難いようです。では、ファッション界の2人の巨匠は、このアイテムをどう着こなすのか?ダブルスーツにまつわるこだわりの話は、時に映画に、時にパリの街へと話題を変え、いつもどおり奔放に進んでいきました。

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■(写真右)赤峰幸生氏
・シャルベのポプリン地のオーダーシャツ
・ボン・マルシェのオリジナルタイ
・リヴェラーノ&リヴェラーノでス・ミズーラしたフランネルスーツ
・クロケット&ジョーンズのスエードシューズ
 
■(写真左)菊池武夫氏
・クールのハット
・ダーク・ビッケンバーグのシャツ
・ジェームス・ロックのタイ
・ルイ・ヴィトンのシルクストール
・ベルヴェストのフランネル地のストライプスーツ
・ジョン ロブのシューズ



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今回の撮影の舞台となったのは、広尾にある「カフェ・デ・プレ」です。
パリの左岸(リヴ・ゴーシュ)にあるようなシックで知的な雰囲気をイメージしたこのお店に、お2人の姿は実によくマッチしていました。。

■男のダンディズムにダブルブレストは不可欠
菊池  今日はちょっと存在感を出したいなと思ったら、ダブルのスーツを選ぶことが多いですね。着ていてどこか気分が違うんですよ。自意識が強くなる感じっていうのかなぁ。
赤峰  その気持ちわかります。何かを装備した感じっていうのかな、自分が少し強くなった気分になりますよね。代議士連中がダブルをよく着ているのもそういうことなんでしょう。権威の象徴というわけではないですけど、気持ちを強くさせるものがありますよね。
菊池  エジンバラ公やチャールズ皇太子、日本の皇室もダブルを着ていることが多いですよね。特にチャールズなんかはダブルのイメージしかない。それも4つボタンの1つ掛け。
赤峰  それと、マフィアですよ。彼らも縞の裁ち目の強いダブルブレストをキチッと着ている印象です。
菊池  そうそう!ダブルといえば、やっぱりマフィアをハズすことはできませんよね。実際、今日の私のコーディネートもマフィアをイメージしていますから(笑)。男のダンディズムを語るうえで、ダブルは必要不可欠なアイテムなんです。それなのに、日本人の中にダブルはまだまだ浸透していない気がします。特に若い人はダブルというだけで敬遠していますよね。
赤峰  本当に若い人は着ませんね。ダブルといっても、年齢や体型によって着こなし方はいろいろあるんですけどね。マフィアの話でいうなら、アル・カポネは背もそれほど高くないですし、お腹も出ていて貫禄のあるダブル姿といった感じでしたけど、その部下だった(注1)フランク・ニティなんかはかなり細身で粋がった感じに着ていて、これがまたいいんですよ。
菊池  カルロ・ポンティとか、(注2)ヴィットリオ・デ・シーカが着るダブルも味があってよかったですよね。
赤峰  カッコよかったですよねぇ。あとは、フランスのモーリス・ロネやジャン・ギャバン。ダブルのスーツにタートルネックニットやポロシャツを合わせたりしているんですけど、そうやって少し崩した着こなしがとにかく雰囲気たっぷりで魅力的でした。
菊池  フランス人の俳優さんにルックスがもの凄くいい人ってほとんどいないじゃないですか。体つきにしても、例えばジャン・ギャバンなんてずんぐりしていますし。でも、ダブルを着ると妙にカッコよかった。洋服に立体感が出るんですよね。
赤峰  イギリスの(注3)レックス・ハリソンもきれいでした。サヴィル・ロウのビスポークのダブルスーツを正統にビシッと着ている感じで。
菊池  そうやって見ていくと、ダブルのスーツってヨーロッパのイメージが強いですね。間違ってもアメリカではない。
赤峰  アメリカ人はカジュアルで機能性を重視するから、シングルブレストのナチュラルショルダーのほうが性に合うんでしょうね。先程もお話ししたように、'20〜'30年代のアメリカのマフィアには見るべきダブルブレストのスタイルもありましたけど、それ以降は'60年代に4つボタン2つ掛けのブレザー、日本ではニューポートモデルと呼ばれるタイプが流行したくらいでしょうか。
菊池  ニューポートモデルかぁ。あれは日本でも人気が出ましたよね。で、今思ったんですけど、日本でカルロ・ポンティやジャン・ギャバンといったら誰になるんでしょうか。確か三國連太郎さんあたりが若い頃に着ていたくらいで、とりたてて印象に残ってる人はいないんですよね。
赤峰  日本ではダブル=重役のイメージが強すぎて、確かにカッコよく着ている感じはありませんでした。ただ、'60年代にモッズが流行した頃、カーナビーブレザーというのがあって、あれはかなり話題になりました。ダブル6つボタン3つ掛けでね。
菊池  はいはい。ラペルが狭くてね。そういえば、僕がメンズ・ビギを始めた頃、ダブルを作ったことがありますよ。ギャバジンを使ったピタピタのジャケットで、パンツはバギー。今思えば変わったデザインでした(笑)。

■ダブルブレストはビシッと皺が寄るくらいで
赤峰  普段からダブルブレストのスーツはお召しになるのですか?
菊池  わりと着るほうです。今日はベルヴェストのスーツですけど、下だけデニムにしたり、ほかのパンツに合わせて着ることも多いですね。これは生来の性格で、どこかで崩したくなってしまうんです。カチッとしすぎると落ち着かない(笑)。
赤峰  でも、それは菊池さんならではのワザですよ。誰にも真似できません。
菊池  その点、赤峰さんはビシッと決まっていて、いつも感心させられます。今日のスーツもいい色合いですね。
赤峰  グレイの中で、最近はこの色が一番好きなんです。例えるならジャスト・ミディアム・グレイとでもいうのでしょうか。明るすぎず、かといって濃すぎず、ちょうどど真ん中をいくグレイが今の気分なんです。ところで、菊池さんのスーツはフランネルですよね。僕のもそうなんですが、やっぱり冬のスーツスタイルといえばフランネルがいいですよね。
菊池  そう思います。特に僕の場合、ダブルにはフランネルというのが感覚的にあります。ダブルのスーツはもう1着あるんですけど、それもフランネルです。どことなくシックな気がするんですよね。
赤峰  確かに。ウーステッドもいいですが、それよりもフランネルのほうがよりダブルのイメージに合っていると思います。ダブルブレストのもつ重厚感と、フラノのもつガッチリした素材感がバランスよく釣り合っているんでしょうね。では、夏のダブルスーツといえばどの素材がいいかというと、これはやっぱり麻ですよね。
菊池  あぁ、いいですねぇ、麻。トロピカルウールで仕立てるとどうもペラペラしすぎてバランスが悪くなってしまいますけど、麻は体への馴染み方がいいですよね。昔、30代の頃かな、僕自身、麻のダブルスーツを着ていた記憶がありますけど、今思い返しても、あれはカッコよかったなぁ(笑)。
赤峰  僕も昔、ロンドンで購入したヴィンテージものがあって、それはダブル6つボタンのヘビーウエイトのリネンジャケットでした。で、面白いことに、そのネームにはカサブランカって書いてあったんですよ。
菊池  おっ!(注4)ボギーですか。いかにも本人が着てそうですよね。
赤峰  ピタッと身体に合わせてね。やっぱりダブルブレストというのは、ボタンを留めたときにビシッと皺が出るくらいでないといけません。そこがツルッとしているといかにもブザマですよ。僕は6つボタンの一番下だけを留めているんですが、あえてこうすることで少し引っ張り上げるような感じになるから、皺の出方がより強調されるんです。
菊池  それカッコイイですよね。赤峰さん流の崩しになっていて。
赤峰  思えば、ジャンニ・アニエッリなんかも独特の着こなしでした。座っているときもダブルのボタンは必ず留めていたし、ネクタイだってわざとジャケットの上に出したり、時計をシャツのカフの上からつけるのも、彼ならではでしたからね。
菊池  そう意味で、日本の男たちよ、もっとダブルをカッコよく粋に着こなしてくれ、という思いはありますね。例えば夕暮れどきにこういうオープンカフェに座って、コニャックやシャンパンを飲みながら話しているんですよ。ダブルのスーツでそれをやったら、いい絵になりますよ(笑)。
 

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(注1) 「フランク・ニティ」
アル・カポネの右腕として一家の、主に戦術面を取り仕切っていた名参謀。「アンタッチャブル」('87)では、ビリー・ドラゴが白いスーツ姿で好演した。1883〜1943年。

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(注2) 「ヴィットリオ・デ・シーカ」
俳優としてキャリアを積んだのち、映画監督に転じ、「自転車泥棒」('48)や「ひまわり」('70)などの映画史に残る傑作を多数手掛けた、伊を代表する巨匠。1901〜1974年。

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(注3) 「レックス・ハリソン」
オードリー・ヘップバーンの愛らしさが光る「マイ・フェア・レディ」('64)にてヒギンズ教授を演じ、見事アカデミー主演男優賞を受賞した名俳優。1908〜1990年。

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(注4) 「ボギー」
永遠のダンディ、ハンフリー・ボガートのこと。「マルタの鷹」('41)や「カサブランカ」('42)などの作品で、当代随一のハードボイルドスターに。1899〜1957年。

Posted by インコントロ STAFF at 00時00分   コメント ( 1 )

コメント

急にコメント失礼致します。
実はメンズEX2007年1月号を探しております。

もしまだお手元にありましたらお譲りいただけないでしょうか?

お礼はもちろんさせていただきたいと思います。

しん 2008年05月12日 18時49分 [削除]

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朝日新聞be on Saturday “赤峰幸生の男の流儀” 『自然から発想する色合わせ』 2013年3月30日(土)掲載

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