AKAMINE BLOG

メンズファッションディレクター 赤峰 幸生のBLOGです。

2009年06月24日(水)

OCEANS 8月号連載 AKAMINE STYLE 目覚めよ、日本の男たち! [OCEANS掲載記事]

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マエストロ赤峰の「オトナ相談室」
仕事、家庭、子育て、そして愛・・・・・・などなど。30〜40代のオーシャンズ世代にもなれば、少なからず何かしら悩みのタネは持っているもの。そんな皆さまの“駆け込み寺”として開設されたのが、このオトナ相談室。
皆様の質問にお答えするのは、“人生のマエストロ”こと赤峰幸生氏。
今月も痛快なご意見で迷えるオーシャンズ読者に救いの手を差し伸べてくれるハズ!では皆さん、ご一緒に! 教えてっ、マエストロ!


今月のテーマ
“人情の機微”

[今月の質問]
赤峰さん、いつも「生きる手本」として、この連載を楽しみにしている36歳の男です。ぜひ聞いていただきたい悩みがあり投稿させていただきました。私は都内で小さなIT関連会社を経営しています。当初は友人と始めた共同経営でしたが、お金の面で話がこじれ、彼は社を去り、同業の会社を立ち上げました。当初は順調だったようですが、この春、不況の煽りを受け、多額の負債を抱え倒産したことを知りました。かつては得意先を奪われて、私も窮地に立たされた苦い思い出もあります。ただ一方で、昔から一本気で、愛すべき男友達でもあります。正直な気持ちを言えば、今、何かの力になりたいと思っています。しかし問題は、彼は自尊心が人一倍強いので、下手なことをして彼のプライドを傷つけてしまわないか、ということです。私は男として、彼とどのように接するべきでしょうか?どうかご教示をお願いいたします。(36歳・埼玉県在住・IT会社勤務・T.Y.さん)

Q.窮地に立つ友人にできること・・・・。まあ、だけど事情を考えると向こうから連絡があるまでそっとしておけばいいのでは?彼もいい大人なんだし、そうでしょ、マエストロッ?
 しょっぱなからてめぇは頭痛がするほど大ばか野郎だなっ!!
 貴様という奴は、すっかり現代の毒に侵されきっている。いいかよく聞け!時代の移ろいとともに失われつつあるが、日本には「機微」という言葉があるのを知っているか。それは「表面からは捉えにくい微妙な事情や趣」という意味であるが、機微というものは、昔から人間関係を築くうえで、重要な役割を果たしてきた。先んじて相手の心情を読み取り、心を尽くした振る舞いをなす。今やなんでも利害関係で割り切ってしまう希薄な人間関係が増えつつあるが、人生をより豊かなものにするためには、この人情の機微をしっかりと理解することが重要なのだ。お前はそんな大切なものをまるっきり理解していない。そんな先には、むなしい人生しか待っていないと心得よ。

Q.う〜ん、キビといわれても・・・。では、こんなケースの場合、早々に彼の好物やお金を贈ってあげればいいですかね?熱い励ましのメッセージを同封すれば完璧?もしや、キビキビやれって意味?
 当代稀に見る大ばか野郎だな、お前はっ!!赤の他人ならつゆ知らず、窮地に立たされた男友達に、そんな安直で形式ばったことが心に届くと思うのか!?機微というのはもっと深みがあって繊細なものだ。
 たとえば、私が父から学んだ機微にはこういうものがある。前にも話したが、父は学者で、欲というものがまったくない清廉な人間であった。そんな父に年に数回、決まって同年輩の友人が訪ねてくる。大学の同窓生で画家だというその友人が来たときにだけ、父は家で酒を飲んだ。卓袱台のそばに清酒の一升瓶を置き、つまみはノリと佃煮といったものだが、質素な父にとっては心づくしのものであっただろう。
 私は普段厳しい父が、相好を崩して酒を飲む姿を見るのが好きだった。とはいえ、ときどき隣の部屋からこっそり覗き見るだけだったが。そんなある夜、こんな光景を目にした。二人は急にしんと黙り込み、二人は目を伏せる。そのとき、父は封筒をそっと差し出した。無言で友人がそれを受け取る。後年、その友人は、家に金の無心をしにきていたことがなんとなくわかった。返済はおそらく一度もなかったが、父の不満はひと言も聞いたことがない。
 作家の菊地寛は友人から金を無心されると、着物の袖に入れていた金すべてを差し出したという。返済は求めなかった、とはいえ、袖にいくら入れているかはあらかじめ計算済みである。返ってこなくても惜しくなく、また、相手が重荷にならない程度の金額をいれておいた、といわれている。そう、これはこれは友情を守るためのひとつの機微だったのである。
 父が友人に貸していた金額もまた、返ってこなくても家計には響かない金額だったはずだ。古い友人が訪ねてくると、金を借りに来たとわかっていても、宴を張る。相手が気を使わない程度のささやかな宴である。訪ねてきた友人への礼儀でもあったのだろう。そしてお互い気持ちよく酒を飲み、帰り際、自分の身が痛まない程度の金を無言で渡す。だからその友人は、父に対して一度も卑屈な態度をとる必要がなかったし、父のほうも望んでいなかった。
 私がすべてを理解したのは、もう大人になってからだった。父のように機微を細やかに捉えた振る舞いはなかなか真似できるものではない。それに、決して無理をしろということではない。ただ相手を思いやり、その気持ちをそのまま行動に移すこと。これが、人情の機微を理解するうえでの基本でありすべてなのだ。

 

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(→)日本男児として、洋装と同じように和装にも精通するマエストロ。今月は夏を目前に控えた時期ということもあって、なんと浴衣に身を包んで登場。新潟は小千谷産のちぢみを使った浴衣は、今回の取材協力をいただいた銀座もとじで7年前に誂えた一着とのこと。ちぢみといえば、西洋でいうシアサッカーにあたる生地で、肌への接地面積が少ない涼しげな着心地が特徴。装いにおいても季節感を楽しむマエストロらしい選択でした。着付けは銀座もとじの当主、泉二弘明さんによるもの。「浴衣の命はなんといっても角帯。横から見ると分かりやすいのですが、後上がり前下がりになっているところが、浴衣を粋に着るときの最大の秘訣です」とは泉二さんの弁。マエストロは「浴衣や着物を着ると、立ち居振る舞いまで変わってくる。おそらくこれ以上に日本人としてのアイデンティティを強く感じる瞬間はない」と終始ご満悦の様子でした。

 
Q.さすがマエストロのお父上っ!ちょっと機微がわかってきました。でも、このケースのように確執がある友人は別でしょう!?ほっとけばいいんじゃないすか?
 ばっか野郎!!人間生きていれば、大きなケンカのひとつやふたつするのは当たり前だろう。大切なのは、そいつという人間性が、最終的に好きかどうかだ。好きなら、絶対に何かしてやるべきだ。そして相手が窮地に立たされたときこそが、その機会なのである。私の経験談を話そう。
 私は28歳でアパレル会社を立ち上げた。そう、この読者と同じように、同年代の親友とだ。その後5年間、会社は順調に成長し、社員が80名を超えるまでになった。しかし、私と彼は経営方針、ものづくりのスタイルなど、さまざまなことで衝突するようになった。我が子のように愛しい社を去るには未練はあったが、私には『もう会社でやることはやった。後は大丈夫だろう』という自負があった。だから私は会社を去った。
 退社する日も挨拶しなかったほどだから、よほど仲が悪かったのだろう。その後も私と彼は、業界でも犬猿の仲で有名だった。その会社は、一時は自社ブランドをヒットさせ、テレビでも見かけるほど成長したのだが、だんだん業績が悪化していった。そして私が会社を辞めてちょうど15年経ったころ、巨額の負債を抱えて倒産してしまったのだ。私はその知らせを聞いたとき、久々に彼のことを思った。腹の立つ思い出もあったが、利害関係もない今なら、お互い素のままに話し合えるのではないかと思い、電話をかけてみた。彼は15年ぶりの私の電話に、ただただ驚いていた。私たちは居酒屋で酒を飲んだ。私は説教をし、なだめ、そして力いっぱい励ました。二人の心は完全に学生時代に戻っていたものだ。そして、その後すぐ彼から手紙をもらった。
「赤峰よ、倒産してみんな蜘蛛の子を散らすように去っていった。そんななか、まさかお前から一番先に連絡をもらえるとは思わなかった。びっくりしたが、正直、うれしかったよ。オレもまだ捨てたもんじゃないな」と書かれていた。
 逆の場合もある。十数年前、私生活の面で問題を抱え、落ち込んだ時期があった。そのとき、村上というかつての部下が、すぐに電話をくれ、「今晩飲みに行きますか」と誘ってくれた。抱えている悩みを信頼できる人間に話すだけでも、心は軽くなるものだ。終始村上はうんうんと話を聞いてくれ、最後にこう言った。「赤峰さん、人生はまだ長いですよ。それに赤峰さんがどうなろうと、オレは友達ですからね」。その言葉を聞いた時、私は焼酎のグラスにぽとぽと大粒の涙をこぼしてしまった。
 この読者も、かつて袂を分かった友人が人間として好きなようだ。ならば、連絡があろうとなかろうと、すぐ電話をかけてやれ。そして酒でも酌み交わせ。もう利害関係もないのだから「お前がどうなろうと、オレはお前の友達だ」と、彼に対する気持ちをぶつけてやればいいのだ。私も経験があるが、社会的に窮地に陥ると、利害関係だけでつながってきた多くの人間は去っていく。そして孤独に苛まれるものなのだ。だからこそ、いの一番に馳せ参じてやる。これが私流の人情の機微である。
 
 

−近ごろのマエストロ−

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「至福の瞬間は何時?」と聞かれれば、現在の私は「家庭菜園で水やりをしているひととき」と答えるだろう。家の庭に小さな家庭菜園がある。トマトやネギなどを植えているが、今年はズッキーニの収穫に成功した。昇り始めた太陽の下で、できたての実を生のままかじってみる。形こそ不細工だが、味は新鮮なキュウリのようにみずみずしく旨い。ものは試しと花も食ってみる。ほのかな甘みと香りが口いっぱいに広がる。ちっぽけな家庭菜園であっても、陽の光と土壌、水があれば、野菜は力強く成長する。人間も同じである。太陽になってくれた恩師、土壌となった両親、水をくれた友人たち・・・・・少々不器用でもいい。
力強く伸びて、こんな実を実らせることが、ひとつの恩返しになるのだと私は思う。
 

着物の奥深さと魅力を味わってみよう!
「新しい時代の新しい着物店」がモットーの銀座もとじ。業界初の男の着物専門店をはじめ、紬の着物や染めの専門店、そして作品紹介を主としたギャラリーといったふうに多様なニーズに応える形態で店舗展開を行う。東京・銀座のほか、大阪・梅田阪急内に店を構える。ただ今、着物を粋にこなす達人でもある泉二弘明社長(写真)と同社顧問であり着物の専門化でもある早坂伊織さんによる「男のきもの塾」を開設中。着物を誂えたい方はもちろん、その着こなしについて学びたい方など詳しくは以下へ問い合わせください。

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電話/03-5524-7472
住所/東京都中央区銀座3-8-15
[ www.motoji.co.jp ]
 

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■皆さんからの質問待ってます!
仕事から家庭、恋愛、そしてファッションetc.・・・・・・、日ごろ読者の皆さんが抱える悩み、疑問など、相談したいことを何でも教えてください。マエストロ赤峰がズバッと解決いたします!小誌ホームページ[ www.oceans-ilm.com ]へアクセスのうえ、トップページから投稿してください。

Posted by インコントロ STAFF at 00時00分   コメント ( 0 )

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朝日新聞be on Saturday " 赤峰幸生の男の流儀 「ビンテージになる服を」 2013年11月16日(土)掲載"

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